ブドウ果皮の着色の有無はVvmybA1 遺伝子型によって決定される

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要約

ブドウ果皮の着色の有無は、VvmybA1 遺伝子型によって決定されており、VvmybA1 は着色決定遺伝子である。

  • キーワード:ブドウ、果皮色、アントシアニン、転写因子、遺伝子型
  • 担当:果樹研・ブドウ・カキ研究チーム
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

ブドウの果皮色は果皮に含まれるアントシアニンの組成と含量により決定される。これまでに、Myb 様転写因子遺伝子VvmybA1 が、果皮アントシアニンの合成制御に深く関わること、さらに、VvmybA1 の近傍にレトロトランスポゾンが挿入した対立遺伝子VvmybA1a ではVvmybA1 の転写が阻害され、アントシアニンの合成が誘導されないのに対し、レトロトランスポゾンを含まないオリジナルの対立遺伝子であるVvmybA1c では、正常にVvmybA1 が転写され、アントシアニンの合成が誘導されることが明らかになっている。しかし、VvmybA1 が着色の有無(アントシアニンの蓄積の有無)を決定する主働遺伝子か否かは未解明である。そこで、交雑実生群を用いてVvmybA1 遺伝子型と果皮の着色の有無との関係を解析し、VvmybA1 が着色決定遺伝子か否か明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 果樹研究所ブドウ・カキ研究拠点において育成中の、3組の交雑組合せ〔安芸津21号(着色)×育82(着色)、 617-14(黄緑色=無着色)×育82(着色)、育71(着色)×育91(黄緑色)〕から得られた実生(それぞれ22、29、41個体)の果皮色は、着 色個体:黄緑色個体がそれぞれ17:5、12:17、24:17個体に分離し、これらの分離比は3:1、1:1、1:1の理論比にそれぞれ適合する(表1)。
  • VvmybA1 遺伝子型を検出するプライマー(図1)を用いて、交雑親および交雑実生群の葉から抽出したDNAを用いてPCRを行うと、黄緑色個体ではVvmybA1a だけが検出されるのに対し、着色個体ではVvmybA1a とVvmybA1c の両方かVvmybA1c だけが検出される(図2)。
  • 交雑親および交雑実生の果皮における着色の有無と、PCR増幅によるVvmybA1 遺伝子型の検出結果が3組の交雑組合せ全てで一致したことから、ブドウ果皮の着色の有無は、VvmybA1 遺伝子型によって決定されており、VvmybA1 は着色決定遺伝子である。

成果の活用面・留意点

  • ブドウ果実の着色の有無を早期判別するマーカーとして利用できる可能性が高い。
  • VvmybA1 は遺伝的に着色の有無を決定する因子であるが、着色の程度(アントシアニンの含量や組成)は他の多くの因子によって変化すると考えられる。

具体的データ

表1. 交雑実生群における果皮色の分離

 

図1.VvmybA1a、VvmybA1cの構造とプライマーの位置

 

図2.PCR増幅による交雑実生(安芸津21号×育82)のVvmybA1 遺伝子型の検出

 

その他

  • 研究課題名:高収益な果実生産を可能とする高品質品種の育成と省力・安定生産技術の開発
  • 課題ID:213-e
  • 予算区分:交付金、交付金プロ(二次代謝)
  • 研究期間:2004~2007年度
  • 研究担当者:東 暁史、小林省藏、薬師寺博、山田昌彦、三谷宣仁、佐藤明彦
  • 発表論文等:Azuma et al. (2007) Vitis 46(3): 154-155