SSRマーカーによるニホングリのDNA品種識別技術

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要約

ニホングリやヨーロッパグリで開発された12種類のSSRマーカーを用いて、60の主要なニホングリ品種の識別が可能である。また、本SSRマーカーを用いて、親子関係の確認が可能である。

  • キーワード:ニホングリ、DNAマーカー、品種識別
  • 担当:果樹研・果樹ゲノム研究チーム
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

ニホングリでは、最近「ぽろたん」などの優良な品種が育成されているが、今後の普及や栽培の加速化に伴って、権利侵害や海外への 違法な流出、さらに海賊版果実の流入が危惧される。そこで、ニホングリを対象に品種識別に利用可能なDNAマーカーの開発、およびDNAマーカーを用いた 科学的な信頼度の高い識別方法の開発を図る。

成果の内容・特徴

  • 「筑波」、「丹沢」、「石鎚」、「伊吹」、「国見」、「紫峰」、「秋峰」、「ぽろたん」、「岸根」、「銀寄」、「大峰」、 「利平ぐり」、「中生丹波」、「笠原早生」、「乙宗」、「大正早生」、「芳養玉」、「豊多摩早生」、「銀鈴」など果樹研究所に植栽されている主要なニホン グリ60品種で、SSRマーカーによる品種識別が可能である。
  • ニホングリ由来の7種類のSSRマーカー(KT001b、KT004a、KT005a、KT015a、KT020a、 KT029a、KT030a)、ヨーロッパグリ由来の5種類のSSRマーカー(CsCAT18、CsCAT24、EMCs2、EMCs13、 EMCs14)の合計12種類のSSRマーカーが、品種識別に利用可能である(表1)。
  • SSRマーカーによって「筑波」、「丹沢」、「石鎚」、「国見」、「紫峰」、「秋峰」、「ぽろたん」の親子関係の確認が可能である(表2)。
  • 「雲竜」は「筑波」の枝変わり品種であるが、「筑波」と同じSSR遺伝子型を示したため、枝変わりと確認される(表2)。同一SSR遺伝子型を示す5組の品種が存在する(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 枝変わり品種と原品種の品種識別について、遺伝子型が同一であるため本マーカーは利用できない。
  • 同一SSR遺伝子型を示す品種は、異名同品種の可能性が予想される。
  • 本DNA品種識別技術では、様々な組織を用いることが可能である。母親由来の組織である葉、鬼皮、座、渋皮から抽出したDNAは、母親と 同じ遺伝子型を示す。一方、子葉から抽出したDNAは、母親と父親の交雑F1世代であり、両親の対立遺伝子を併せ持つため、分析に際して注意を要する。

具体的データ

表1 ニホングリの解析に利用可能なSSRマーカーの特徴

 

表2 SSRマーカーによるクリ品種の来歴の確認結果

 

その他

  • 研究課題名:果樹の育種素材開発のための遺伝子の機能解析及びDNA利用技術の開発
  • 課題ID:221-j
  • 予算区分:交付金、交付金(所内重点強化枠)、委託プロ(食品)
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:山本俊哉、西谷千佳子、寺上伸吾、今井剛、佐藤明彦、澤村豊、高田教臣、平林利郎