ブドウ果房への低夜温処理は、着色開始期のABAを増加させ、着色を改善する
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要約
ブドウの着色は果房への低夜温処理により促進され、高夜温処理により抑制される。低夜温で着色が促進された果皮の着色開始期のアブシジン酸(ABA)含量は高く、逆に高夜温で着色が抑制された果皮のABA含量は低い。
- キーワード:ブドウ、高温、果皮、着色、ABA
- 担当:果樹研・果樹温暖化研究チーム
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・栽培
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
近年の気候温暖化に伴い、西南暖地のブドウ産地で夜間の温度が下がらず、商品価値を低下させる着色不良が大きな問題となってきて
いる。着色不良は果皮のアントシアニン含量が低いと発生し、着色不良対策を早期に確立するためには温度がブドウ果皮のアントシアニン生成過程に及ぼす影響
の解明が必要である。またブドウのアントシアニンの生合成にはABAが促進的に働くことが知られている。そこで、着色期間中の夜間の果房温度がブドウ果皮
のアントシアニンとABA含量に及ぼす影響を解明する。
成果の内容・特徴
- 着色開始期前から収穫期までの間(7月1日~8月7日)ブドウ「安芸クイーン」果房に対して温度処理(図1、2)を行うと、低夜温区(自然温-5℃)の果皮の着色は自然温区より改善される(図3)。
- 高夜温区(自然温+5℃)の果皮の着色は自然温区よりも悪くなる(図3)。
- 着色開始期~着色開始10日後(7月14日~7月24日)にかけて、果皮ABA含量は低夜温区で高く、高夜温区で低い(図4)。
- 果房への低夜温処理による着色開始期の着色促進は、ABA含量の増加と対応する(図3、4)。
成果の活用面・留意点
- 本成果は果房でのみ温度処理を行っており、樹体温度は全ての処理区で同一なため、樹体温度の違いによる光合成同化産物の転流量の影響を排除して着色と温度との関係を考察することができる。
- ブドウの着色向上技術を確立するための基礎的知見となる。
具体的データ
その他
- 研究課題名:気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
- 課題ID:215-a
- 予算区分:交付金プロ(気候温暖化)
- 研究期間:2003~2007年度
- 研究担当者:児下佳子、朝倉利員、福田浩幸(佐賀果試)、土田靖久
- 発表論文等:Koshita et al. (2007) Vitis 46(4) 208-209