MYB様転写因子遺伝子はリンゴ果皮の着色に関与する
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
リンゴの成熟果の果皮で発現するMYB様転写因子遺伝子(MdMYBA )は、果皮の着色が誘導される低温等の条件下で発現量が増加する。これを過剰発現させたリンゴ子葉等では着色が誘導されることから、MdMYBA はリンゴの着色の鍵となる遺伝子の一つである。
- キーワード:リンゴ、アントシアニン、着色、MYB様転写因子
- 担当:果樹研・果樹温暖化研究チーム
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・栽培
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
リンゴ果実の赤い着色は、果実の商品価値を大きく左右する要因の一つである。この着色はアントシアニン色素によるものであり、果
実発育後期の高温によりこの色素の合成が著しく阻害されることから、今後の気候温暖化により果実の着色不良が起こることが懸念されている。本研究では、リ
ンゴにおけるアントシアニン生合成の制御機構の解析を進め、高温による果実着色不良の原因を分子レベルで明らかにし、着色改善技術の開発につなげることを
目的とする。
成果の内容・特徴
- MdMYBA はアントシアニンが集積する成熟果実の果皮で特異的に発現が認められ、その発現量は品種の着色能力とも相関がある(データ省略)。また、MdMYBA は、最もアントシアニン含有量が高くなる17℃+UV-Bの条件(図1-A)で発現レベルが高くなり、高温やUV-Bの無い条件では低くなる(図1-B)。
- 本遺伝子を一過的にリンゴの発芽直後の子葉で発現させると、アントシアニンの合成が導入部分で誘導されて赤いスポットが形成
される。また、アグロバクテリウム法によりタバコに導入して過剰発現させると、花弁、花糸、子房等の生殖器官が野生型と比較して一層赤くなるのが観察され
る(図2)。
- ゲルシフトアッセイを行うと、MdMYBAタンパク質はanthocyanidin synthase (ANS )のプロモーター領域に結合する(データ省略)。
- 以上のことから、MdMYBA はリンゴのANS 等のアントシアニン生合成系酵素遺伝子の発現制御を介して着色を誘導していると推察される。そして、高温条件下ではMdMYBA 遺伝子自身の発現が低下し、アントシアニン生合成系酵素遺伝子の発現誘導が低下することで、果実の着色不良に至ると考えられる。
成果の活用面・留意点
- MdMYBA には少なくとも3つの対立遺伝子が存在することから、この対立遺伝子のゲノムの配列情報を利用することにより、果皮の赤くなる品種・系統を早期選抜するためのマーカー作成に役立つ可能性がある。
具体的データ
その他
- 研究課題名:気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
- 課題ID:215-a
- 予算区分:交付金プロ(気候温暖化)
- 研究期間:2003~2007年度
- 研究担当者:森口卓哉、伴 雄介(筑波大)、本多親子(機構本部)、初山慶道(青森グリーンバイオセンター)、五十嵐 恵(青森グリーンバイオセンター)、別所英男
- 発表論文等:Ban et al. (2007) Plant Cell Physiol. 48(7): 958-970