閉経した女性ではウンシュウミカンをよく食べる人ほど骨密度が高い

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要約

閉経した女性では、ウンシュウミカンをよく食べ、血清中β-クリプトキサンチン濃度が高い人ほど骨密度が高く、骨密度低値のリスクが低い。

  • キーワード:ウンシュウミカン、β-クリプトキサンチン、骨密度、閉経女性
  • 担当:果樹研・健康機能性研究チーム
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・栽培
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

最近の欧米を中心とする栄養疫学研究から、果物・野菜の摂取が健康な骨の形成・維持に重要であることが明らかにされつつある。こ れは骨に重要なビタミンやミネラル類が果物・野菜には豊富に含まれるためと考えられている。しかしながら、血清中のカロテノイド値と骨密度との関連につい て疫学的に検討された報告はなかった。そこで、ウンシュウミカンの健康機能性をヒトレベルで評価するために、国内主要ウンシュウミカン産地の住民約千名を 対象に、平成15年度より実施している栄養疫学調査(三ヶ日町研究)において、ウンシュウミカン摂取と骨の健康との関係について、血清中β-クリプトキサ ンチン濃度と骨密度との関連性から検証する。

成果の内容・特徴

  • ミカンに多く含まれている血清中のβ-クリプトキサンチン濃度について、最も低いグループから最も高いグループまで集団を4分割にし、各グループでの非利き腕の橈(とう)骨1/3遠位部(図1) における平均骨密度を計算すると、閉経女性(293名)の骨密度は血清β-クリプトキサンチンレベルが高いグループほど有意に高い傾向にある。この関連 は、年齢や身長、体重、閉経後の経過年数、生活習慣、またビタミンやミネラル類の摂取量などの影響を統計学的に取り除いても有意である(図2)。
  • 血清中のβ-クリプトキサンチンが高濃度のグループ(平均値2.41 μM)における骨密度低値出現は、低濃度のグループ(平均値0.67 μM)を1.0にした場合、0.45(オッズ比(脚注参照))となり有意に低い(図3左)。
  • 果物の高摂取グループ(一日あたりの平均摂取量271グラム)における骨密度低値出現は、低摂取グループ(一日あたりの平均摂取量66グラム)を1.0にした場合、0.44(オッズ比)となり有意に低い(図3右)。
  • 栄養摂取状況調査から、対象集団が最も高頻度に摂取している果物はミカンである。また果物高摂取グループでの血清中β-クリプトキサンチン濃度は、図3左における血清中β-クリプトキサンチン高濃度グループとほぼ等しいことから、本対象集団における果物摂取量はミカン摂取量を反映している。
  • 一方、β-クリプトキサンチン以外のカロテノイドや野菜摂取量ではこのような有意な関連は認められない。また男性や閉経前の女性においてもこのような関連はみられない。

成果の活用面・留意点

  • ミカンを食べることが骨粗鬆症の予防に役立つ可能性が示唆されることから、今後、ヒトレベルでの研究を進める際に役立つ資料となる。
  • 本調査結果は横断研究の結果であり、結果と原因との時間的な関係を考慮出来ていないため、より因果関係を明らかにするためには追跡研究が必要である。

具体的データ

図1 前腕部の骨構造 図2 血清中のβ-クリプトキサンチンレベル(4分割位)別にみた骨密度

 

図3 血清中のβ?クリプトキサンチンレベル、果物摂取量別にみた骨密度低値出現の調整オッズ比

 

脚注)オッズとはある出来事が発生しない確率に対する発生する確率の比を示し、オッズ比は二つのオッズの比を現す。図3左では、血清中β-クリプトキサンチンレベルの低いグループを基準(オッズ比1)としたとき、高いグループのオッズ比が0.45であり、これは血清中β-クリプトキサンチンレベルの低いグループに比べて高いグループでは骨密度低値のリスクが55%低いことを意味する。

 

その他

  • 研究課題名:かんきつ・りんご等果実の機能性成分の機能解明と高含有育種素材の開発
  • 課題ID:312-c
  • 予算区分:委託プロ(食品)
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:杉浦 実、中村美詠子(国立長寿研)、小川一紀、生駒吉識、安藤富士子(国立長寿研)、矢野昌充
  • 発表論文等:Sugiura et al. (2008) Osteoporos. Int. 19: 211-219