Colletotrichum acutatum のβ-チューブリン1遺伝子過剰発現によるベノミル耐性
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要約
植物病原糸状菌Colletotrichum acutatum のベノミル耐性は、ロイシンジッパータンパク質CaBEN1によって制御されるβ-チューブリン1遺伝子の過剰発現に起因している。
- キーワード:Colletotrichum acutatum、ベノミル耐性、β-チューブリン1遺伝子、過剰発現
- 担当:果樹研・果樹病害研究チーム
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・病害虫
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
果樹等に炭疽病を引き起こす重要植物病原糸状菌であるColletotrichum acutatum は種の特徴としてベノミル耐性を示す。これまでに多くの菌類でベノミル耐性機構について研究され、β-チューブリンにおける1アミノ酸置換が原因の一つで あることが明らかにされてきた。一方、本菌のベノミル耐性機構はそれとは異なることが示唆されている。そこで、C. acutatum のベノミル感受性変異株を作製するとともに、ベノミル耐性に関わる遺伝子を単離・解析して、本菌のベノミル耐性機構を解明する。
成果の内容・特徴
- ベノミル耐性を示す野生株CAB03(ブドウ分離株)と野生株へのマーカー遺伝子挿入法により作製したベノミル感受性変異株CAT7-150のβ-チューブリン遺伝子(CaTUB1 およびCaTUB2 )に配列の違いは認められない。
- CAT7-150株からプラスミドレスキュー法で単離したベノミル耐性関連遺伝子CaBEN1 は818アミノ酸からなるロイシンジッパータンパク質をコードすると推定される。野生株CAB03のCaBEN1 遺伝子を破壊するとベノミル感受性が再現される(図1)。
- 野生株のCaTUB1 遺伝子はベノミル処理によって発現が顕著に誘導されるが、CaBEN1 遺伝子破壊株ではCaTUB1 遺伝子のベノミルによる誘導的発現が観察されない(図2)。このことからロイシンジッパータンパク質CaBEN1がCaTUB1 遺伝子のベノミルによる誘導的発現に関わっていると推測される。
- CaBEN1 遺伝子破壊株にCaTUB1 遺伝子過剰発現ベクターpCaTUB1-OE1を導入した形質転換株(CAB03Δben1-OE1および-OE2)を作出し、CaTUB1 遺伝子を過剰発現させるとベノミル耐性が回復する(図3、表1)。このことはC. acutatum のベノミル耐性がCaTUB1 遺伝子の過剰発現に起因することを示している。
成果の活用面・留意点
- β-チューブリン1遺伝子の過剰発現によるベノミル耐性機構はこれまでに例がなく世界初の報告である。
- 他の菌類におけるβ-チューブリン1遺伝子過剰発現機構については今後の研究が必要である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:果樹の紋羽病等難防除病害抑制のための要素技術の開発
- 課題ID:214-p
- 予算区分:交付金、交付金プロ(形態・生理)
- 研究期間:2006~2007年度
- 研究担当者:中畝良二、中野正明
- 発表論文等:Nakaune and Nakano (2007) Fungal Genetics and Biology 44: 1324-1335