ニホンナシの発現遺伝子群の大量解析により開発したマイクロアレイ

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要約

本マイクロアレイは、ニホンナシ品種「豊水」の果実を中心にした様々な器官由来の11種類のcDNAライブラリーから収集した約10,000種類の独立発現遺伝子塩基配列の解析情報を基に設計されたものである。

  • キーワード:ニホンナシ、発現遺伝子、cDNA、ゲノム、マイクロアレイ
  • 担当:果樹研・果樹ゲノム研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-6474
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

ニホンナシでは、高い果実品質や省力適性などを備えた品種の育成や新たな栽培技術の開発のために必要な発現遺伝子の情報が非常に限定されている。ニホンナシ主要栽培品種「豊水」の果実など様々な器官の発達段階で発現する多数の遺伝子の塩基配列を決定し、推定機能などのカタログ化が必要である。 マイクロアレイはガラススライド上に固定された多数の遺伝子の発現を網羅的に解析する技術で、遺伝子間の相互作用を捉えたり、大量のクローン中から特定の遺伝子を選抜する遺伝子特定の手法として利用できる。シロイヌナズナやイネなどのモデル植物で強力なゲノム解析手法として利用されているが、ニホンナシではこれまでに報告はなく、独自のマイクロアレイの開発を図る。

成果の内容・特徴

  • ニホンナシ品種「豊水」の11種類のcDNAライブラリー(果実由来6種類、葉・花由来5種類)に由来する23,755クローンのうち、重複を除いて決定された独立した遺伝子配列は10,350種類である(表1)。
  • シロイヌナズナ遺伝子の塩基配列との相同性検索から、豊水の10,350種類の独立な遺伝子配列のうち、既知遺伝子との相同性が確認され、機能が推定されたのは7,473配列であり、約70%に相当する。(図1)。
  • ニホンナシのマイクロアレイには、ニホンナシ品種「豊水」等から独自に収集した発現遺伝子の配列情報をもとに、9,812個の遺伝子が搭載されている。

成果の活用面・留意点

  • ゲノム解析が進んでいる植物での遺伝子数(約3~5万種類)から、本マイクロアレイは、ニホンナシの遺伝子の20~30%程度を含むと推定される。
  • 本マイクロアレイは、遺伝・育種・栽培分野や植物病理分野において、ニホンナシの様々な生理現象に関する研究に利用できる。
  • ニホンナシ以外のナシ属植物に利用する場合には、塩基配列の相違の影響を受ける場合があるので、注意が必要である。
  • 本マイクロアレイは、果樹研究所との共同研究により利用可能である。

具体的データ

表1 作成したcDNAライブラリーと配列数

図1 ニホンナシ発現遺伝子の機能分類(GoSlim Molecular Functionによる)

その他

  • 研究課題名:果樹の育種素材開発のための遺伝子の機能解析及びDNA利用技術の開発
  • 中課題整理番号:221j
  • 予算区分:基盤、交付金プロ(果実発現遺伝子)
  • 研究期間:2005年~2009年度
  • 研究担当者:西谷千佳子、清水徳朗、藤井 浩、寺上伸吾、山本俊哉
  • 発表論文等:Nishitani, C. et al. (2009) Acta Horticulture 814: 645-650 Nishitani, C. et al. (2010) Scientia Horticulturae 124: 195-203