ウンシュウミカンのカロテノイド含量は収穫後の温度およびエチレン遭遇で変化する

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要約

収穫後のウンシュウミカンにおけるカロテノイド含量は、20°Cでエチレンと遭遇すると、非遭遇よりも果皮で高くなるが、果肉では差がない。一方、5°Cでエチレンと遭遇すると、カロテノイド含量は果皮および果肉のいずれでも非遭遇よりも低く推移する。

  • キーワード:ウンシュウミカン、カロテノイド、収穫後温度、エチレン
  • 担当:果樹研・健康機能性研究チーム
  • 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・栽培
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

ウンシュウミカンは収穫後の貯蔵・流通過程において、低温から高温までさまざまな温度に遭遇するほか、エチレンを発生する青果物との混載や陳列によりエチレンにさらされる可能性がある。カロテノイドはカンキツ果実の橙色を構成する成分であり、果実の色を決定する重要な要素であるほか、一部のカロテノイドにはヒトの栄養成分としての働きがある。このため、果実におけるカロテノイド含量を減らさない収穫後の条件を見いだすことは果実品質を保つ上で重要である。そこで、収穫後の温度やエチレンとの遭遇が、ウンシュウミカンの果皮および果肉中のカロテノイド含量に及ぼす影響を解明する。

成果の内容・特徴

  • 収穫後の果実を20°Cの温度におくと、5°Cあるいは30°Cにおいた場合と比べて、果皮中の総カロテノイド含量(フィトエン、ζ~カロテン、β~カロテン、β~クリプトキサンチンおよびビオラキサンチン含量の総和)は大幅に増加し、果皮の着色が改善される(図1)。果肉においても、20°Cにおくと、総カロテノイド含量は5°Cあるいは30°Cよりも高く推移する傾向を示す(図1)。
  • 収穫後の果実が20°Cでエチレンに遭遇すると、総カロテノイド含量は、エチレン非遭遇よりも、果皮で高くなるが、果肉では差がない(図2)。一方、5°Cでエチレンに遭遇すると、果皮と果肉のいずれにおいても非遭遇に比べて総カロテノイド含量は低く推移する傾向を示す(図2)。
  • 果皮においては、エチレンとの遭遇により、カロテノイド生合成酵素であるphytoene synthase (PSY)およびphytoene desaturase (PDS)の遺伝子発現が、20°Cで促進されるのに対し、5°Cでは逆に抑制され、温度が異なるとこれらの遺伝子のエチレンに対する応答性が異なることが示唆された(図3)。この応答性の違いが、温度が異なった場合のカロテノイド集積に対するエチレンの作用の違い(20°Cでは促進、5°Cでは抑制)の原因と考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 本研究の成果は、低温下で保存・流通を行う場合には、カロテノイド含量を維持するために、エチレンとの遭遇を避けたほうが望ましいという、収穫後の取り扱い指標の一つを提供する。
  • 20°Cという温度は、カロテノイド含量の維持・増強効果に優れるが、数週間程度、この条件下におかれた場合は、食味等の品質が低下する場合があることに留意する必要がある。

具体的データ

図1</a> 収穫後の温度が総カロテノイド含量に及ぼす影響

図2</a> 異なる温度条件下でのエチレンとの遭遇が総カロテノイド含量に及ぼす影響

図3</a> 異なる温度条件下でのエチレンとの遭遇が果皮におけるPSYおよびPDSの遺伝子の発現量に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:かんきつ・りんご等果実の機能性成分の機能解明と高含有育種素材の開発
  • 中課題整理番号:312c
  • 予算区分:委託プロ(食品)
  • 研究期間:2007年~2009年度
  • 研究担当者:松本光、生駒吉識、加藤雅也(静岡大)、中嶋直子、長谷川美典
  • 発表論文等:Matsumoto H. et al. (2009) J. Agric. Food Chem. 57:4724-4732