硬肉モモを軟化させるための簡便なエチレン処理方法
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
硬肉モモは、自らエチレンを生成せず軟化しないが、エチレン濃度を10ppm、二酸化炭素濃度を2%以下に維持できる機能性段ボール箱とエチレン発生剤を用いて2~3日間処理することにより、食べごろの果肉硬度まで軟化させることが可能である。
- キーワード:エチレン、硬肉モモ、果肉軟化、機能性段ボール箱
- 担当:果樹研・果実鮮度保持研究チーム
- 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・栽培
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
我が国では軟らかい肉質のモモが好まれているが、モモは軟化速度が速く、食べ頃となる適度な肉質を維持することが困難である。一方、モモには成熟期のエチレン生成が遺伝的に抑制されており成熟期になっても軟化しない硬肉タイプのモモ(硬肉モモ)がある。これまでの研究により、硬肉モモはエチレンを処理すると軟化するが、エチレン処理を停止すると軟化が停止し、人為的に軟化を制御できることが明らかにされているが、硬肉モモを適度に軟化させるためにはエチレンを2~3日間通気処理する必要があり、大がかりな処理装置が必要となる。そこで、生産者でも処理が可能な簡便な処理技術を開発するため、適度なガス透過性を持つ機能性段ボール箱と持続的にエチレンを発生するエチレン発生剤を用いた処理方法を検討する。
成果の内容・特徴
- 機能性段ボール箱(ライナーに二軸延伸ポリビニルアルコールフィルムをラミネート,内寸460 mm 300 mm 150 mm)内でエチレン発生剤(発生速度:約14 μL/hour)を使用することによりエチレン濃度7~10 ppmを70時間維持することができる(図1)
- エチレン処理は、機能性段ボール箱内に硬肉モモの成熟果実5 kg相当を入れて、エチレン発生剤とともに封緘し、25°Cで3日間放置する(図2)。
- エチレン処理期間中の箱内エチレン濃度は約10 ppmを維持し、かつ二酸化炭素濃度は炭酸ガス障害の発生が懸念される2%以下に抑えられ、酸素濃度の大幅な低下も見られない(表1)。
- 硬肉モモ「おどろき」および「まなみ」の果肉硬度は2日間または3日間のエチレン処理により食べごろとされる約10 Nまで低下する(図3)。
成果の活用面・留意点
- 軟化後の肉質は、自然に軟化する「あかつき」や「川中島白桃」等の肉質に比べて多汁性に欠ける。
- エチレン発生剤からのエチレン発生量は気温に依存するため、処理温度に応じて処理時間を調整する必要がある。
- エチレン発生剤は試作品であり、市販されていない。
- 適切なエチレン処理期間は果実熟度や果実の収穫後日数などによっても異なる。
- 過度なエチレン処理は果肉障害の発生を助長するため注意する。
具体的データ




その他
- 研究課題名:果実の輸出等を促進する高品質果実安定供給のための基盤技術の開発
- 中課題整理番号:313a
- 予算区分:交付金プロ(果実等輸出)
- 研究期間:2005年~2007年度
- 研究担当者:羽山裕子、阪本大輔、樫村芳記、中村ゆり
- 発表論文等:羽山ら(2009)日本食品保蔵科学会誌35(5):235-240