キイカブリダニはアザミウマ類に対する捕食能力と増殖力に優れた土着天敵である

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要約

キイカブリダニは、果樹と野菜の重要害虫であるアザミウマ類に対して高い捕食能力を示す土着天敵である。室内実験では48時間以内にチャノキイロアザミウマ1令幼虫を20頭捕食し、他のカブリダニ類に比べて高い内的自然増加率を示す。

  • キーワード:キイカブリダニ、発育、増殖、捕食能力、アザミウマ、土着天敵
  • 担当:果樹研・果樹害虫研究チーム
  • 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・病害虫、共通基盤・病害虫(虫害)
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

果樹園には種々のカブリダニ類が生息し、重要害虫であるアザミウマ類を捕食する種類も知られるが、それらの生態的特性の解明はほとんど進んでいない。そこで、ブドウ園などでチャノキイロアザミウマへの捕食性が観察されるキイカブリダニの発育、捕食能力、増殖力を解明し、土着天敵を利用した果樹アザミウマ類の制御技術開発に役立てる。

成果の内容・特徴

  • ブドウ、チャ、ダイズ等、種々の植物上で観察されるキイカブリダニ(図1)は、ミナミキイロアザミウマを餌にしてインゲンマメ株上での室内累代飼育が可能である。
  • キイカブリダニの発育速度は温度と有意な関係があり(決定係数r2=0.89)、卵から成虫までの期間は15°Cで9.6日、25°Cで4.2日、発育零点温度は8.8°Cとなった。他のカブリダニ類での結果と比較して本種は低温域での発育期間が短い特徴がある(図2表1)。
  • 直径15mm、高さ5mmの小空間では、チャノキイロアザミウマ1令幼虫20頭を与えた場合、キイカブリダニ雌成虫は48時間で1令幼虫をすべて捕食し、2令幼虫を与えた場合の1日あたり産卵数は約6個である。本種はミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマに対しても優れた捕食能力を示す(図3)。
  • ミナミキイロアザミウマ幼虫を与えた場合、キイカブリダニの日あたり産卵数は産卵開始後速やかに増加し、個体群の増殖力の指標である内的自然増加率rmは25°Cで0.305を示す。この値は既報のカブリダニ類の中でも高い種類に入り、アザミウマ類に対する制御力が期待される(表1)。

成果の活用面・留意点

  • キイカブリダニの発育、増殖、アザミウマに対する捕食能力の報告はこれまでわずかである。今回明らかにした詳細な諸特性は、天敵を利用した果樹アザミウマ類等の防除技術開発に活用できる重要な基礎資料である。
  • キイカブリダニは野外の種々の植物上から記録されるが、その果樹園における個体群動態については今後の解明が必要である。

具体的データ

図1 キイカブリダニ雌成虫

図2 キイカブリダニの発育に及ぼす温度の影響

図3 キイカブリダニのアザミウマ類に対する捕食能力

表1 キイカブリダニの発育期間、生活史パラメータの他のカブリダニとの比較

その他

  • 研究課題名:天敵等を用いた果樹害虫の制御・管理技術の開発
  • 中課題整理番号:214n
  • 予算区分:科研費
  • 研究期間:2006年~2007年度
  • 研究担当者:望月雅俊
  • 発表論文等:Mochizuki M (2009) J. Acarol. Soc. Jpn. 18(2): 73-84