易渋皮剥皮性のクリ「ぽろたん」の渋皮の水溶性画分にはポリフェノールが少ない

要約

渋皮が剥けやすいクリ「ぽろたん」は、渋皮に含まれる総ポリフェノール量は他のニホングリと同程度でチュウゴクグリより多い。一方、渋皮の水溶性画分に含まれるポリフェノール量は他のニホングリより少なく、チュウゴクグリと同程度である。

  • キーワード:クリ、「ぽろたん」、ポリフェノール、渋皮剥皮性
  • 担当:果樹・茶・ナシ・クリ等
  • 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 研究所名:果樹研究所・品種育成・病害虫研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

「ぽろたん」は、チュウゴクグリと同程度に渋皮が剥けやすいニホングリである。クリの渋皮の水溶性画分に含まれるポリフェノールに接着力があることから、渋皮と果肉の接着にはポリフェノールが関与していることが示唆されている。また、渋皮中のポリフェノール量について、その総量および水溶性画分の含量は、いずれも渋皮が剥けやすいチュウゴクグリで少なく、剥けにくいニホングリで多いことが明らかとなっている。そこで、「ぽろたん」の渋皮に含まれるポリフェノールの量を明らかにし、渋皮の剥けやすさについての知見を得る。

成果の内容・特徴

  • 「ぽろたん」およびチュウゴクグリである「宮崎支那栗」は渋皮が剥けやすく、ニホングリである「国見」、「筑波」は渋皮が剥けにくい(表1)。
  • 水溶性画分は渋皮と果肉の間に、アルコール可溶性画分は渋皮の細胞中に、アルコール不溶性画分は渋皮の細胞壁にそれぞれ存在すると推定されている。各画分のポリフェノール量を合計した総ポリフェノール量は、「ぽろたん」は、「国見」、「筑波」と同程度で「宮崎支那栗」より多い(図1)。
  • 「ぽろたん」の水溶性画分中のポリフェノール量は「国見」、「筑波」より少なく、「宮崎支那栗」と同程度である(図1)。一方、「ぽろたん」のアルコール可溶性画分のポリフェノール量は他のクリ品種よりも多い(図1)。これらのことから、「ぽろたん」ではポリフェノールが渋皮の細胞中に多量に蓄積するが、渋皮と果肉の間の蓄積量が少ないために渋皮が剥けやすくなっている可能性が考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 「ぽろたん」の易渋皮剥皮性の原因解明についての基礎的知見となる。

具体的データ

表1 供試作種の渋皮剥皮性
図1 供試作種の渋皮1g当たりのポリフェノール量

(高田教臣)

その他

  • 中課題名:高商品性ニホンナシ・クリ及び核果類の品種育成と省力生産技術の開発
  • 中課題番号:142a0
  • 予算区分:交付金、実用技術
  • 研究期間:2007~2011年度
  • 研究担当者:高田教臣、佐藤明彦、澤村豊、平林利郎、田中敬一、西尾聡悟、齋藤寿広
  • 発表論文等:Sato et al. (2010) J. Japan. Soc. Hort. Sci. 79(3):258-262