四倍体欧米雑種ブドウのMYBハプロタイプの構成と果皮色の関係
要約
四倍体欧米雑種ブドウの果皮色(黄緑、赤、黒)は、着色遺伝子座に存在するMYBハプロタイプの構成から判別できる。また、アントシアニン高含有の黒色品種は、すべて着色機能のあるMYBハプロタイプで構成される。
- キーワード:果皮色、気候温暖化、ハプロタイプ、ブドウ、マーカー選抜
- 担当:果樹・茶・ブドウ・カキ
- 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 研究所名:果樹研究所・ブドウ・カキ研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
ブドウ果皮の着色の有無(アントシアニン蓄積の有無)は、着色遺伝子座に存在するMYBハプロタイプの構成により決定されることが明らかとなっている。しかし、「巨峰」をはじめとする四倍体欧米雑種ブドウの詳細な果皮色(黄緑、赤、黒)判別法は未確立である。そこで、四倍体ブドウのアントシアニン含有量とMYBハプロタイプとの関係を明らかにし、MYBハプロタイプを利用した果皮色判別法を開発する。さらに、我が国の主要な黒色品種である「巨峰」や「ピオーネ」において、気候温暖化に伴う着色不良が深刻な問題となっていることから、よりアントシアニン高含有で、高温下でも着色が優良な黒色品種のMYBハプロタイプの構成を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 四倍体欧米雑種ブドウの着色遺伝子座に存在するMYBハプロタイプのうち、HapAには着色機能がなく、HapE1およびHapE2には着色機能がある(図1)。さらに、HapE2の着色機能はHapE1よりも高い(データ省略)。
- リアルタイム定量PCR法を用いてHapA、HapE1、HapE2のゲノム中の存在比を解析することにより、四倍体ブドウのMYBハプロタイプの構成を推定できる。
- 黄緑色品種のMYBハプロタイプは、着色機能のないHapAのみから構成される(表1)。アントシアニン含有量の少ない赤色品種はA/A/A/E1と、着色機能の低いHapE1が一つだけ存在する。黒色品種のMYBハプロタイプの構成はA/A/E1/E2、A/E1/E1/E2、E1/E1/E2/E2である。
- アントシアニン高含有で着色優良な黒色品種「ブラックビート」はE1/E1/E2/E2と、すべて着色機能のあるMYBハプロタイプで構成される。
成果の活用面・留意点
- MYBハプロタイプを利用した果皮色判別法は、品種だけでなく交雑実生にも適用可能であるため、本法により着色優良な黒色個体等を早期選抜できる可能性がある。
- MYBハプロタイプの種類と数が同じ品種間でも、アントシアニン含有量に差があることから、果皮色に関与する未知の遺伝子座が存在する可能性がある。
- MYBハプロタイプの構成がA/A/E1/E1やA/A/A/E2等の個体の果皮色は不明である。今後、実生群等を用いてこれらの構成を持つ個体の果皮色を調査する必要がある。
具体的データ
(東 暁史)
その他
- 中課題名:高商品性ブドウ・カキ品種の育成と省力生産技術の開発
- 中課題番号:142b0
- 予算区分:交付金、委託プロ(温暖化適応)
- 研究期間:2009～2011年度
- 研究担当者:東 暁史、宇土幸伸(山梨果樹試)、佐藤明彦、三谷宣仁、河野 淳、伴 雄介、薬師寺博、児下佳子、小林省藏
- 発表論文等:Azuma et al. (2011) Theor. Appl. Genet. 122:1427-1438