極めて糖度が高く、良食味の中生カンキツ新品種「あすみ」
要約
カンキツ新品種「あすみ」はカンキツ興津46号に「はるみ」を交雑して育成した中生のミカンである。1月下旬~2月上旬に成熟し、糖度が極めて高く、芳香があり食味に優れる。
- キーワード:カンキツ、新品種、中生、高糖度、良食味
- 担当:果樹・茶・カンキツ
- 代表連絡先:電話 029-838-6453
- 研究所名:果樹研究所・カンキツ研究領域
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
1~2月に成熟する中生カンキツは、果樹研究所をはじめ公立試験研究機関から数多くの品種が育成され、普及が進んでいる。しかし、これらは年によっては、糖度上昇が十分でない場合や酸が高い場合がある。そこで、糖度がさらに高く、食味が優れるととともに、剥皮可能で食べやすい中生品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 1992年に果樹試験場興津支場(現 果樹研究所カンキツ研究興津拠点)においてタンゴールタイプの育成系統であるカンキツ興津46号にみかん品種「はるみ」を交雑して育成した品種である。2003年より系統名カンキツ興津58号としてカンキツ第9回系統適応性・特性検定試験に供試して検討し、2011年8月の同試験成績検討会において新品種候補とした。2011年12月7日に品種登録出願し、2012年3月16日に「あすみ」として品種登録出願公表された。
- 樹勢は中程度、樹姿は直立性と開張性の中間である。枝梢の長さは長く、太さは中位で、発生密度は中程度である。枝梢のとげの発生は多く、長い。そうか病の発生はないが、かいよう病に対してはやや弱い。隔年結果性は中程度である(表1)。
- 果実は150g程度で、果皮は橙色で薄い。果面は滑らかで、剥皮のしやすさは中程度で、オレンジ様の芳香がある。完全着色期は1月上旬と極めて遅い。浮き皮の発生はない。果肉は濃橙色で、じょうのう膜は軟らかく食べやすい。成熟期は1月下旬~2月上旬で、果汁の糖度は15%以上と極めて高く、クエン酸含量は1.0%程度となり、食味が良好である。機能性成分のβ-クリプトキサンチン含量は果肉100g あたり1.66mg と高く、ウンシュウミカンの「興津早生」と同程度含む(表2、図1)。
普及のための参考情報
- 普及対象:カンキツ生産者
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:大分県、宮崎県、長崎県、福岡県の試験地において有望と評価されており、これらの産地から普及が見込まれる(許諾苗木生産業者数:8県、34業者)。
- その他:本品種の糖度は高く、土壌および気象条件に対する適応範囲は広いのでシートマルチによる水分ストレス処理を与えることなく、高糖度果実生産が可能である。また、かいよう病の発生を防止し、着色良好で商品性の高い果実生産のためには施設栽培が向いている。なお、施設栽培では裂果の発生を抑制するために、加温開始時期に留意し、また急激な土壌水分量の変動がないよう土壌水分管理に注意する必要がある。
具体的データ
その他
- 中課題名:成熟期の異なる良食味のカンキツ品種の育成と省力生産技術の開発
- 中課題番号:142c0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:1992~2011年度
- 研究担当者:吉岡照高、吉田俊雄、根角博久、喜多正幸、國賀 武、中嶋直子、野々村睦子、太田 智、濱田宏子、瀧下文孝
- 発表論文等:1)吉岡ら「あすみ」品種登録出願 2011年12月7日 (第26542号)