SSRマーカーによる日本のパインアップル品種のDNA品種識別

要約

パインアップルで開発した18種類のSSRマーカーにより、沖縄県で育成された7品種を含む合計30のパインアップル品種・系統のDNA品種識別が可能である。

  • キーワード:パインアップル、SSRマーカー、DNA品種識別
  • 担当:果樹・茶・果樹ゲノム利用技術
  • 代表連絡先:電話 029-838-6453
  • 研究所名:果樹研究所・品種育成・病害虫研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

パインアップル(Ananas comosus (L.) Merr.)は、熱帯アメリカ原産のパイナップル科の多年草で、その生産はバナナとカンキツ類に次ぐ主要熱帯果樹として位置付けられる。日本では沖縄県が主産地であり、沖縄県農業研究センターから高品質の生食用パインアップル7品種が育成・品種登録されている。 栄養繁殖性作物では登録品種の権利侵害が危惧されるため、高精度DNAマーカーによるDNA品種識別技術の開発が進められている。そこで本研究では、利用可能な高精度DNAマーカーが少なく、DNA品種識別技術が確立されていないパインアップルについて、SSR (simple sequence repeat)マーカーの開発とそれを利用したDNA品種識別技術の確立に取り組む。

成果の内容・特徴

  • 濃縮ゲノムライブラリ法により、パインアップル品種「N67-10」から作製した18種類のマーカーは、品種間で明瞭な増幅を示し品種識別に適する。
  • 開発したSSRマーカーは多型性が高く、マーカーあたり3~7個の対立遺伝子(平均4.1)を持ち、ヘテロ接合度の期待値は0.09-0.76(平均0.52)である。
  • 供試したパインアップル30品種・系統は、18種類のSSRマーカーで識別が可能である(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 開発したSSRマーカーは、沖縄県で育成されたパインアップル7品種「N67-10」、「ゴールドバレル」、「ハニーブライト」、「ジュリオスター」、「ソフトタッチ」、「サマーゴールド」、「ゆがふ」の育成者権保護に利用可能である。
  • 突然変異によって生じた品種と原品種は、本マーカーセットの遺伝子型が同一であり、マーカーによる識別はできない。
  • SSRマーカーの解析と遺伝子型の判定には、DNAシーケンサーを用いるのが望ましい。

具体的データ

 図1

その他

  • 中課題名:果樹におけるDNAマーカー育種のための高度基盤技術の開発
  • 中課題番号:142g0
  • 予算区分:交付金、沖縄県単
  • 研究期間:2010~2012年度
  • 研究担当者:山本俊哉、正田守幸(沖縄農研セ名護)、浦崎直也(沖縄農研セ)、崎山澄寿(沖縄農研セ名護)、寺上伸吾、保坂ふみ子(契約職員等)、滋田徳美(契約職員等)、西谷千佳子
  • 発表論文等:Shoda M. et al. (2012) Breed. Sci. 62: 352-359