カンキツの268個のSNP遺伝子型を迅速に決定できるアレイの開発
要約
開発したカンキツのSNP(一塩基多型)アレイは、交雑実生集団等を対象に、迅速に268個のSNPマーカーの遺伝子型決定を行うことができ、カンキツのDNAマーカー育種に利用可能である。
- キーワード:カンキツ、アレイ、SNPマーカー、迅速、育種
- 担当:果樹・茶・果樹ゲノム利用技術
- 代表連絡先:電話 029-838-6453
- 研究所名:果樹研究所・カンキツ研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
カンキツでは、SSR(単純反復配列)、CAPS(断片増幅多型配列)、SNP(一塩基多型)などのDNA多型を利用したDNAマーカーが開発され、重要形質のマッピングと選抜マーカーの作出、素材品種の評価や遺伝子型決定、DNAマーカー育種に利用されている。しかし、多様な育種目標に対応し、形質のマッピングと選抜マーカー開発を効率よく進めるためには、多数の交雑個体で遺伝子型決定を迅速に行うためのシステムが必要である。それを実現する技術として、カンキツSNPアレイ(以下「本アレイ」)を開発する。
成果の内容・特徴
- 本アレイに搭載されたSNPは、クレメンティン、「宮川早生」、「トロビタ」、「麻豆ブンタン」、キシュウミカン、カンキツ興津46号、「かんきつ中間母本農6号」由来のゲノム塩基配列をクレメンティン半数体の配列と比較参照して開発したものである。
- カンキツ97品種・系統および88交雑実生に本アレイを適用した結果、268個のSNPマーカー遺伝子型の判定が可能であり、本アレイを用いて効率的にカンキツの遺伝子型が判定できる。
- 268個のSNPマーカーは、97品種・系統に適用した結果、ヘテロ遺伝子型の割合が高く、選抜マーカーに適している(表1)。
- 本アレイは、268個のSNPについて、同時に96サンプルの遺伝子型決定を行うことができ、解析に要する期間は5日間であることから、従来法と比べて迅速な分析が可能である。
成果の活用面・留意点
- 本アレイは、迅速な連鎖地図の作成、多様な形質のマッピングを通じて、DNAマーカー育種に貢献する。
- 本アレイは、カンキツ属には有効であるが、近縁のカラタチやキンカンを交配親とした品種・系統に対しては、正しい結果を得られない可能性がある。
- 得られたSNPおよび周辺配列情報は、本研究成果情報の関連論文(発表論文等を参照)のSupplementary Materialとして公開している(表2)。
具体的データ
その他
- 中課題名:果樹におけるDNAマーカー育種のための高度基盤技術の開発
- 中課題番号:142g0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2008年~2012年度
- 研究担当者:藤井浩、島田武彦、野中圭介、喜多正幸、國賀武、遠藤朋子、生駒吉識、 大村三男(静岡大)
- 発表論文等:Fujii et al. (2013) Tree Genet. Genomes, 9: 145-153.