放射能で汚染されたウンシュウミカンとブルーベリーにおける放射性セシウム分布

要約

原発事故の放射能で汚染されたウンシュウミカンでは、9ヶ月後、事故後に発生した新葉に放射性セシウムは著しく多く分布する。ブルーベリーでは1年枝以外の枝と根幹に放射性セシウムは多く分布する。これらの部位の放射性セシウム濃度はいずれも高い。

  • キーワード:ウンシュウミカン、ブルーベリー、放射性セシウム、分布
  • 担当:放射能対策技術・移行低減
  • 代表連絡先:電話 029-838-6453
  • 研究所名:果樹研究所・研究支援センター
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

東京電力福島第一原子力発電所の事故後、放射能汚染地域で生産された果実の一部から基準値を超える濃度の放射性セシウムが検出されている。そこで、(独)農研機構果樹研究所(茨城県つくば市)に植栽した着果量の異なるウンシュウミカン2樹と事故前のせん定程度が異なるブルーベリー2樹を事故9ヶ月後に堀上げ、樹体を部位別に解体した試料と深さ別に採取した土壌の放射性セシウム濃度を測定し、ウンシュウミカンとブルーベリーにおける放射性セシウムの分布状態を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 3月の原発事故から9ヶ月後、ウンシュウミカンでは、着果量が約2.5倍異なっても樹に含まれる放射性セシウムの50%は葉に分布している(図1)。葉の放射性セシウム濃度は樹体内で最も高く、特にフォールアウトを直接受けた旧葉の濃度が高い(表1)。樹に含まれる放射性セシウムのうち、原発事故後に発生した新葉に、少着果樹では42%、多着果樹では31%が分布している。果実にはともに8%前後分布している(図1)。
  • 多着果樹の着果量は少着果樹の約2.5倍であるが、放射性セシウムの量は少着果樹の約1.4倍であり、果実の放射性セシウム濃度は45%低い(図1、表1)。
  • 原発事故前にせん定しなかったブルーベリー無せん定樹は、せん定樹より側枝と主枝の重量が多く、樹に含まれる放射性セシウムの42%が側枝と主枝に分布している(図2)。無せん定樹は、側枝と主枝の放射性セシウム濃度がせん定樹の約2倍と高く(表1)、樹に含まれる放射性セシウムがせん定樹より著しく多い。
  • ブルーベリー樹に含まれる放射性セシウムのうち、せん定樹は54%、無せん定樹は66%がフォールアウトを直接受けた側枝、主枝、主幹に分布している。根幹にもそれぞれ36%、27%分布している(図2)。しかし、原発事故後に発生した新葉と1年枝は、ともに5%前後と少なく、放射性セシウム濃度も側枝、主枝、主幹、根幹より低い(表1)。
  • 放射能で汚染されたウンシュウミカンとブルーベリーの樹体と樹冠下の土壌(深さ30cmまで)に含まれる放射性セシウムのうち、1~3%が樹体に分布している。60%以上は深さ5cmまでの表層土壌に分布しているが、根の放射性セシウム濃度はフォールアウトを直接受けた葉や枝より低く、樹に含まれる放射性セシウムのうち、根に分布している量はウンシュウミカンでは10%前後、ブルーベリーでは2%前後である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 放射性セシウムの量は、測定した放射性セシウム濃度と樹体は生重、土壌は乾燥重から算出している。ただし、根幹の濃度は測定しなかったため、主幹と根(0-5cm)の放射性セシウム濃度の平均値を濃度と仮定している。
  • ウンシュウミカンは、2年前に定植した5年生の若木の結果である。
  • ブルーベリーは17年生のラビットアイ系統品種で、調査時に果実がなかったため、果実を含めずに樹体内分布割合を算出している。
  • 土壌の濃度は、深さ別に堀取った全量の中から一部を採取して測定している。

具体的データ

図1~2、表1~2

その他

  • 中課題名:農作物等における放射性物質の移行動態の解明と移行制御技術の開発
  • 中課題番号:510b0
  • 予算区分:実用技術
  • 研究期間:2011年度
  • 研究担当者:平岡潔志