ダイレクトPCR法による迅速で簡便なカンキツグリーニング病の検出法

要約

検定樹の葉中肋部からミニホモジナイザーチューブを用いて粗抽出液を抽出し、ダイレクトPCR法を行うことによって、迅速で簡便にカンキツグリーニング病の感染を診断できる。

  • キーワード:カンキツグリーニング病診断、ダイレクトPCR法、ミニホモジナイザー
  • 担当:環境保全型防除・侵入病害虫リスク評価
  • 代表連絡先:電話 029-838-6453
  • 研究所名:果樹研究所・品種育成・病害虫研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

カンキツグリーニング病は我が国南西諸島で発生し、カンキツ栽培に深刻な被害をもたらしている。本病の根絶や発生分布域の縮小のためには感染樹を速やかに伐採する必要があり、そのため迅速かつ大規模な感染樹検定を実施しなければならない。しかし従来の検定方法では、検定数の増加に伴ってDNA抽出過程に多大な時間と労力を掛ける必要がある。そこで検出感度を維持しつつも迅速かつ簡便にカンキツグリーニング病を診断できる試料調製法およびダイレクトPCR法を新たに開発する。

成果の内容・特徴

  • 既報のプライマーセットでは困難であったダイレクトPCR法は、農研機構で開発したプライマーセットLas606/LSS(農研機構研究成果情報, 2012)によって可能となる。
  • 検定樹体の葉より切り出した中肋部を、細断後にミニホモジナイザーチューブのカラム上で滅菌水とともに軽くすり潰す。遠心ろ過したカラム通過画分の沈殿物を滅菌水で再懸濁し回収する(図1)。この粗抽出液中にカンキツグリーニング病原細菌が含まれており、これを鋳型としてダイレクトPCR法を行うと、従来法(CTAB法による抽出試料とOI1/OI2cプライマーセットによるPCR法)より明瞭に、本病の感染を診断できる(図2)。
  • 本法ではDNA精製過程を要さないため、少ない作業工程で容易に試料調製でき、多数の検体を扱う際でも、従来法に比べ大幅な作業時間の短縮と省労力化が実現できる(表)。また、有機溶媒を用いず試料調製できるので、従来法に比べて、より安全であるとともに、特殊な機器・設備をも必要としない。
  • 本法は従来法と同様に、エタノール等による前処理を施した葉からも試料調製ができ、従来のサンプリングや保存・運搬法にも適用できる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:行政機関、普及機関、民間検査機関等
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:国内外のカンキツグリーニング病が発生している地域および発生警戒区域(沖縄県、鹿児島県)
  • その他:本法は沖縄県病害虫防除技術センターで2013年より感染樹診断法として活用されている。

具体的データ

図1~2,表

その他

  • 中課題名:侵入病害虫等の被害リスク評価技術の開発および診断・発生予察技術の高度化
  • 中課題整理番号:152e0
  • 予算区分:交付金・農食研究事業
  • 研究期間:2012年度~2013年度
  • 研究担当者:藤川貴史・宮田伸一・岩波徹
  • 発表論文等:
    カンキツグリーニング病の効率的な診断マニュアル(2014)
    Fujikawa, Miyata and Iwanami (2012) PLOS ONE, 8:e57011.
    Fujikawa and Iwanami (2012) Molecular and Cellular Probes, 26:194-197.