リンゴのカラムナー性に極めて強く連鎖するDNAマーカー

要約

リンゴの公開ゲノム配列を用いて開発したSSRマーカーMdo.chr10.12とMdo.chr10.14は、カラムナー性の原因遺伝子Co と0cMの遺伝的距離で連鎖し、高精度な早期選抜マーカーとして利用できる。

  • キーワード:カラムナー性、SSRマーカー、リンゴゲノム、DNAマーカー選抜
  • 担当:果樹・茶・リンゴ
  • 代表連絡先:電話 029-838-6453
  • 研究所名:果樹研究所・リンゴ研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

リンゴのカラムナー性はそのコンパクトな樹形から、剪定を簡略化して省力栽培に利用できる素材として期待されているが、カラムナー型の樹形を示す生食用の品種は育成されていない。カラムナー性はリンゴ第10連鎖群に座乗する単一の優性遺伝子Co により制御されており、これまでにCo と連鎖するDNAマーカーが開発されている。しかし、これらのDNAマーカーはCo との間に一定の遺伝的距離があり、マーカー選抜の際に誤選抜が生じるという問題がある。そこで、通常型とカラムナー型の樹形を示すリンゴとを交雑して得られた31交雑組合せのF1集団の1000個体を用いて、Co と極めて強く連鎖するDNAマーカーを開発する。

成果の内容・特徴

  • Co の最も近傍で組換えを起こしている3個体におけるCo 近傍のグラフ遺伝子型から、Co が座乗している領域はSSRマーカーMdo.chr10.11とMdo.chr10.15の間と判断される(図1)。これらのSSRマーカーは、リンゴ品種「Golden Delicious」の公開ゲノム配列の第10染色体の18766kbpと18961kbpに位置することから、Co が座乗する領域の物理距離は195kbpと推定される。
  • 公開ゲノム配列の第10染色体から開発した22種類の新規SSRマーカーを連鎖解析した結果、SSRマーカーMdo.chr10.12とMdo.chr10.13とMdo.chr10.14はCo との遺伝的距離が0cMであり、Co と極めて強く連鎖している(図1)。
  • SSRマーカーMdo.chr10.12とMdo.chr10.14を用いると、Co と相引に連鎖する対立遺伝子とその他の対立遺伝子とを容易に識別することが可能であるので、これらのSSRマーカーは交雑実生集団を早期選抜するマーカーとして利用できる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • SSRマーカーMdo.chr10.13を用いると、「Delicious」と「Jonathan」において、Co と相引に連鎖する対立遺伝子123bpと同じ増幅長の対立遺伝子が検出されるので、早期選抜マーカーとしての利用は困難である。
  • カラムナー性の起源である「Wijcik」は通常型の品種「McIntosh」の枝変わり品種であるので、SSRマーカーを用いた解析では両品種は同じ対立遺伝子型を示す。このため、「McIntosh」の後代を通常型の交雑親とする交雑実生集団のマーカー選抜は困難な場合がある。
  • SSRマーカーの解析と遺伝子型の判定には、DNAシーケンサーを利用する必要がある。

具体的データ

図,表1

その他

  • 中課題名:高商品性リンゴ等品種の育成と省力生産技術の開発
  • 中課題整理番号:142e0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2009~2013年度
  • 研究担当者:森谷茂樹、岡田和馬、土師岳、山本俊哉、阿部和幸
  • 発表論文等:Moriya S. et al. (2012) Plant Breed. 131:641-647