リンゴの早期落果程度の評価には幼果の肥大量の測定が有効である

要約

リンゴの幼果期の落果(早期落果)程度は樹により大きく異なる。幼果の肥大量は、果そうの葉数によらず樹内のどの果そうでも一定で落果率と高い相関がある。落果程度の差を評価するには、落果率より幼果の肥大量を求める方が、変動が少なく有効である。

  • キーワード:リンゴ、早期落果、品種間差、果実肥大
  • 担当:果樹・茶・リンゴ
  • 代表連絡先:電話 029-838-6453
  • 研究所名:果樹研究所・リンゴ研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

リンゴ栽培では摘果作業に多大な労力がかかる。リンゴには摘果剤が開発されているが、現在登録されているものは天候や品種により十分な摘果効果が得られないため、新規の薬剤の探索が進められている。一方、リンゴには結実した幼果が自然に落果する早期落果という現象も普通にみられ、特に落果時期が早く落果程度の大きいものを「自家摘果性」と呼び、自家摘果性を有する品種は摘果作業の労力を軽減すると期待されている。
摘果剤の効果および早期落果性の品種間差を評価するには、処理樹間もしくは品種による落果程度の違いを明らかにする必要があるが、これまで一般的に用いられてきた指標である落果率は、樹勢の影響を受けやすく、明確な違いが現れにくい。そこで、落果率に代わる落果程度の違いを評価できる新たな指標を開発する。

成果の内容・特徴

  • 果そう葉(果枝葉、果台葉、果台枝葉)数の違いによる幼果の落果率は品種によって差があるものの、葉数の少ない果そうで落果率の高い品種が多く、果そうの栄養状態によって落果率は大きく異なる場合がある(図1)。
  • 結実した幼果のうち、満開後15日頃から、果そう内の小さい幼果が落ちはじめる。果そう内の全幼果の体積の合計は、対数変換すると満開後30日まではほぼ直線的に推移し、果そう内の着果数が異なっていても、また、果そう葉数に違いがあっても、果そう内全幼果の体積の増加速度は、樹内でほぼ一定の値を示す(図2)。果そう葉の多少に関わらず落果率の変化が小さい品種でも、同様の傾向が認められる。
  • 葉数が少ない果そうは、満開後30日までは、幼果の肥大を抑制せずに着果数を減らすことで個々の幼果の肥大を維持していると言える。
  • 満開後15日から満開後30日まで、果そう内全幼果の体積を経時的に測定して算出した幼果の肥大速度と落果率との間には高い相関がある(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 幼果の体積は、幼果を球体とみなして横径から算出し、果そう内全幼果の体積は = 果そう内のi番目の幼果の横径、n = 果そう内の着果幼果数から求める。
  • 幼果の肥大速度(対数変換値)は、満開後30日を超えると直線から外れてくるとともに、果そう間で差が生じてくる。

具体的データ

図1~3

その他

  • 中課題名:高商品性リンゴ等品種の育成と省力生産技術の開発
  • 中課題整理番号:142e0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010年~2013年度
  • 研究担当者:岩波宏、守谷(田中)友紀、本多親子、和田雅人、森谷茂樹、岡田和馬、土師岳、阿部和幸
  • 発表論文等:Iwanami et al. (2012) Sci. Hortic. 146:39-44