チャバネアオカメムシは体サイズより脱皮を優先し齢期間は餌条件に左右されない

要約

チャバネアオカメムシの発育期間は2~4齢の各齢期でほぼ決まっており、餌条件に左右されない。このため、体サイズは餌条件に強い影響を受ける。5齢には性差がみられ、雌では羽化時の体サイズが優先され、餌条件が悪いと齢期間が延びる可能性がある。

  • キーワード:チャバネアオカメムシ、脱皮、体サイズ、餌条件
  • 担当:環境保全型防除・天敵利用型害虫制御
  • 代表連絡先:電話 029-838-6453
  • 研究所名:果樹研究所・ブドウ・カキ研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

果樹の重要害虫であるチャバネアオカメムシの餌条件は、年や季節、環境により大きく異なり、生存、繁殖、成長・発育を介して本種の発生動態に強く影響する。しかし、餌不足に対する発育反応など、餌条件の違いが若虫に及ぼす影響については未だ知見に乏しい。そこで、本種の発育特性を餌条件との関係から実験的に明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 2~4齢の各齢において給餌期間を短縮し採餌量を制限しても、若虫は高率で次齢に達し、その齢期間に差異はみられない(表1)。一方、次齢に達した若虫の脱皮時の体サイズは、給餌期間が短くなるほど小さくなる(表2)。このことは、2~4齢においては発育速度が餌条件に依存せず、条件が悪くても齢期間は変わらないこと、結果として餌条件が体サイズに強く影響することを示している。
  • 5齢では給餌期間を短縮し採餌量を制限すると、脱皮率が大きく下がる(表1)。一方、次齢脱皮時(羽化時)の体サイズに対する餌条件の影響には性差がみられ(表2)、雄は他齢と同様に給餌期間の制限により体サイズが減少するのに対し、雌では給餌制限下でも体サイズに減少がみられない。このことは、雌では給餌制限下でも十分な採餌量を得た個体のみが羽化に達したことを示す。雌では羽化時の体サイズが優先され、餌条件が悪いと齢期間が延びる可能性がある。
  • 3~5齢では、無給餌条件下でも次齢に達する若虫がみられる(表1)。このことから、前齢から繰り越された栄養上の蓄積が存在し、その僅かな蓄積でも発育が進むものと推察される。なお、1齢若虫は採餌を行わないため、2齢では無給餌条件下で次齢に達する若虫がみられない。また、無給餌条件下におかれた2齢若虫の生存日数も5日前後で他齢(10日前後)より短いことから、他齢若虫に比べ飢餓耐性に劣る可能性がある。

成果の活用面・留意点

  • チャバネアオカメムシの発生消長や体サイズの年次間変動をもとに発生予察を行う上での科学的根拠となる。
  • 本種は齢期間を一定に保つことで、質・量ともに変動が大きい餌資源に対して、臨機応変に体サイズを調整している可能性がある。
  • 各齢期において、給餌期間により採餌量を調整することが出来る。その採餌量は脱皮率と成長量への影響から栄養状態として評価できる。

具体的データ

表1~2

その他

  • 中課題名:土着天敵等を利用した難防除害虫の安定制御技術の構築
  • 中課題整理番号:152b0
  • 予算区分:委託事業(発生予察)
  • 研究期間:2010~2011年度
  • 研究担当者:外山晶敏、三代浩二、中野亮、井原史雄
  • 発表論文等:Toyama M. et al. (2013) Appl. Entomol. Zool. 48 (4):461-467