ブドウべと病菌分生子の正確な計数には界面活性剤を使用する

要約

ブドウべと病抵抗性の評価にあたり、発病葉に形成された分生子数を正確に計測するためには、分生子懸濁液に界面活性剤を添加して実験器具への分生子の付着を妨げることにより誤差を抑制する。

  • キーワード:ブドウ、ブドウべと病、分生子、界面活性剤
  • 担当:果樹・茶・ブドウ・カキ
  • 代表連絡先:電話029-838-6453
  • 研究所名:果樹研究所・ブドウ・カキ研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ブドウべと病はブドウ栽培における最重要病害のひとつであるが、主要防除薬剤であるQoI剤に対して耐性菌が出現したことから、本病抵抗性品種の育成は一層重要な育種目標となっている。発病葉に形成されるべと病菌分生子(遊走子のう)は罹病性の高いブドウほど多くなるため、分生子形成量は本病抵抗性の程度を示す良い指標となる。しかし、分生子は高い付着性を有するため、分生子数計測に至るまでに実験器具に付着してしまうことで大きな誤差が生じる。そこで、抵抗性品種育成に不可欠なブドウ品種系統のべと病抵抗性評価法のひとつとして、発病葉等に形成された分生子を正確に計測する手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 界面活性剤(Tween20)を分生子懸濁液に加えると、0.01%(v/v)でも実験器具への分生子付着を阻害する効果は高い(図1)。従って、分生子懸濁液濃度測定にはTween20を添加することが有効である。
  • 分生子懸濁液にTween20を加えてブドウ葉に接種するとほぼ発病しなくなる(図2)。
  • 分生子が形成されたリーフディスク等に終濃度0.01%(v/v)のTween20溶液を加えてマイクロチューブ内で分生子懸濁液を調整すると、分生子数を正確に計測できる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • リーフディスク等に形成された分生子の数を本手法により計測することで、抵抗性の強弱をより客観的に評価することができる。
  • 分生子の実験器具への付着による損失は特に低濃度の懸濁液で影響が大きいが、本手法により低濃度の懸濁液でも分生子の損失なく正確な濃度測定が可能になる。
  • Tween20を加えていない状態では、高濃度懸濁液で実験操作を行うのが良い。

具体的データ

その他

  • 中課題名:高商品性ブドウ・カキ品種の育成と省力生産技術の開発
  • 中課題整理番号:142b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2012~2015年度
  • 研究担当者:河野淳、佐藤明彦、Bruce
  • 発表論文等:Kono A. et al. (2015) HortScience 50(5):656-660