ブドウのチャノキイロアザミウマ第1世代は光反射シートマルチにより抑制できる
要約
緑色系ブドウ品種「シャインマスカット」に光反射シートを敷設すると、チャノキイロアザミウマ第1、2世代成虫のブドウへの飛来を抑制し、新梢の寄生個体を6月下旬まで抑制できる。その結果、第1世代成虫飛来時期の殺虫剤散布を削減できる。
- キーワード:チャノキイロアザミウマ、ブドウ、光反射シート
- 担当:環境保全型防除・天敵利用型害虫制御
- 代表連絡先:電話029-838-6453
- 研究所名:果樹研究所・ブドウ・カキ研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
チャノキイロアザミウマScirtothrips dorsalisはブドウの最重要害虫で、新梢や果実を加害し、果粒表面や穂軸に褐色の加害痕を発生させ、果実品質の低下をもたらす。微小昆虫である本種は、肉眼による観察で発生時期や寄生の有無を把握することが困難であるため、成虫の飛来の多少にかかわらず、飛来時期に合わせて殺虫剤を散布する必要がある。光反射シートマルチはカンキツにおいてチャノキイロアザミウマの飛来や果実被害の低減効果が報告されている。そこで、本資材を利用したチャノキイロアザミウマに対する殺虫剤削減技術の開発を、被害が目立ちやすいブドウの緑色系品種「シャインマスカット」において行う。
成果の内容・特徴
- 垣根仕立ての「シャインマスカット」の列の両側に沿って光反射シートを開花約1ヶ月前の4月下旬に敷設すると、チャノキイロアザミウマは第2世代成虫飛来時期まで、黄色粘着トラップにほとんど捕獲されない(図1)。
- シートマルチにより、チャノキイロアザミウマの第1世代成虫飛来時期に「シャインマスカット」新梢への本種の寄生が認められなくなる(図2)。
- シートマルチ区においてチャノキイロアザミウマ第2世代成虫飛来時期に防除を実施し、第3世代成虫の飛来前に袋かけを行うと、果実被害を第1、2世代成虫飛来時期と袋かけ前の3回防除した慣行防除と同程度に抑えることができる(表1)。シートマルチにより、チャノキイロアザミウマ第1世代成虫飛来時期の防除の削減が可能となる。
成果の活用面・留意点
- 本成果は、広島県東広島市の「シャインマスカット」垣根栽培における結果である。
- シートマルチの資材価格は一般の薬剤散布と比較して高価である。本技術の導入にあたっては、資材の耐用年数や果実品質の向上・収量増加効果などの観点を含めた検討が必要である。
- 本研究成果は「シャインマスカット」で得られたものであるが、他の緑色系品種についても適用できると考えられる。
具体的データ
その他
- 中課題名:土着天敵等を利用した難防除害虫の安定制御技術の構築
- 中課題整理番号:152b0
- 予算区分:その他外部資金(地域再生)
- 研究期間:2012~2015年度
- 研究担当者:新井朋徳、外山晶敏、芦原亘
- 発表論文等:新井ら(2016)果樹研報、21:31-42