ブドウ「シャインマスカット」のマスカット香を保ちやすい貯蔵温度

要約

ブドウ「シャインマスカット」のマスカット香およびその寄与成分は、10°Cで貯蔵し続けた場合に最も保たれやすく、0°Cで4週間程度貯蔵すると減少する。しかし0°C貯蔵後に香りが減少した後でも、再び10°Cで保持するとマスカット香が回復する。

  • キーワード:シャインマスカット、マスカット香、貯蔵温度
  • 担当:加工流通プロセス・品質評価保持向上
  • 代表連絡先:電話 029-838-6453
  • 研究所名:果樹研究所・カンキツ研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

「シャインマスカット」はマスカット香を特徴とする皮ごと食べられる良食味ブドウだが、収穫後にマスカット香が減少することが経験的に知られていた。マスカット香は「シャインマスカット」の重要な品質要素であるため、マスカット香を維持することが重要である。そこで、「シャインマスカット」のマスカット香の寄与成分を特定し、貯蔵温度と貯蔵期間の違いがマスカット香およびその寄与成分の含量に及ぼす影響を明らかにするとともに、貯蔵中に減少したマスカット香を回復させる温度管理方法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 「シャインマスカット」のマスカット香の主要な寄与成分はリナロールである。
  • リナロール含量は、いずれの貯蔵温度(0、2、5、10°C)でも時間の経過とともに減少するが、減少の速度と程度は温度により異なり、低温ほど急速かつ大幅に減少し、調査した温度の中では10°Cで最も良く維持される(図1)。
  • 官能評価から、10°Cで4週間貯蔵した果実は、0°Cで貯蔵した果実よりもマスカット香が強く、リナロール含量も0°Cで貯蔵した果実に比べて高い(図2)。
  • 0°Cで4週間貯蔵しリナロール含量が減少した果実を、その後10°Cで保持すると、リナロール含量が増加する(図3)。
  • 官能評価から、0°Cで4週間貯蔵後に10°Cで7日間保持した果実の香りは、0°C貯蔵を継続した果実に比べて香りが強く、リナロール含量も0°C貯蔵を継続した果実に比べて高い(図3、4)。
  • このことから、香りの良い「シャインマスカット」を供給するためには、腐敗の発生が問題になりにくい短期貯蔵の場合には10°C程度で貯蔵する一方、長期貯蔵など低温での貯蔵が必要な場合には、貯蔵後に10°C程度で保持するとマスカット香を回復できる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、「シャインマスカット」のマスカット香は貯蔵温度によって強く影響され、10°Cがマスカット香の維持や回復に有効な温度であることを示しており、マスカット香を減らさない収穫後の取り扱い方法について重要な情報となる。
  • 図3、4は0°Cで4週間貯蔵した果実を用いた試験である。0°Cで2週間および8週間貯蔵した果実でも同様の傾向が見られる。貯蔵条件が異なる果実では別途検討が必要である。
  • 10°Cより高い温度がマスカット香に及ぼす影響については、検討が必要である。また、腐敗や果肉硬度等の果実品質については別に検討が必要である。

具体的データ

図1

その他

  • 中課題名:農畜産物の品質評価・保持・向上技術の開発
  • 中課題整理番号:330a0
  • 予算区分:その他外部資金(地域再生)
  • 研究期間:2012~2014年度
  • 研究担当者:松本光、生駒吉識
  • 発表論文等:Matsumoto H. and Ikoma Y. (2016) Postharvest Biol. Tech. 112(2):256-265