ウンシュウミカンの食味関連成分の変化を少なくする貯蔵温度

要約

ウンシュウミカンを5°Cで貯蔵すると、外観は良好であるにもかかわらず、代謝変化が起きてアミノ酸の1つであるオルニチンが急増する。一方それより高い10°C付近の貯蔵温度では代謝変化が起こりにくく、アミノ酸等の食味関連成分の変化が少ない。

  • キーワード:ウンシュウミカン、収穫後温度、オルニチン、食味関連成分
  • 担当:加工流通プロセス・品質評価保持向上
  • 代表連絡先:電話 029-838-6453
  • 研究所名:果樹研究所・カンキツ研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ウンシュウミカンなどのマンダリン類の貯蔵温度は、腐敗防止や外観保持の観点から、3~5°Cの低温が推奨されている。しかし、近年、この温度域でマンダリン類を貯蔵すると、見た目は良好であるにもかかわらず、食味が劣化することが知られはじめている。そこで、収穫直後と種々の温度で2週間貯蔵した果実の果肉中の食味関連成分(糖、有機酸、アミノ酸)のプロファイルをLC/MS/MSにより分析・比較し、収穫後の成分変化が少なく、収穫直後の成分プロファイルを維持しやすい貯蔵温度を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ウンシュウミカン「青島温州」果肉中の糖および有機酸の含量は、いずれの貯蔵温度(5、10、20、30°C)でも、2週間ではほとんど変化しないのに対して、アミノ酸では、貯蔵温度により大きく変化する種類が存在する(図1)。
  • 5°Cでは、アミノ酸の1つであるオルニチンが急激に増加し、低温による代謝変化が生じる(図2)。20°C以上の温度では、フェニルアラニンやバリン等の特定のアミノ酸の含量が急激に増加する(図1)。
  • 10°Cでは、5°Cで見られるオルニチンの急激な増加を伴う代謝変化が起こらないほか、その他のアミノ酸の含量変化も極めて少ない(図1)。
  • 5°Cで見られるオルニチンの急増を伴う代謝変化は、ウンシュウミカンの品種(確認済みの品種:「日南1号」、「興津早生」、「宮川早生」、「シルバーヒル温州」、「青島温州」)に共通した現象である(図3)。
  • これらの結果は、ウンシュウミカン果実において、食味関連成分の変化を少なくする貯蔵温度が、これまで最適とされてきた5°Cより高い、10°C付近の温度域であることを示す。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、従来最適とされてきた3~5°Cよりも高い温度域の方がウンシュウミカンの貯蔵中の成分変化を少なくできることを示したものであり、ウンシュウミカンの貯蔵時の温度管理に有用な情報となる。
  • ウンシュウミカン等のマンダリン類において、風味を保ちやすい貯蔵温度は5°Cより高い8°C付近であることが国内の冷風貯蔵庫で実証されているほか、海外でも同様の結果が報告されはじめており、本研究成果はこれらの知見を成分レベルで支持するものである。
  • 3~5°Cの低温貯蔵における食味の劣化は、低温による代謝変化の結果であり、オルニチンの増加が原因ではない。

具体的データ

図1

その他

  • 中課題名:農畜産物の品質評価・保持・向上技術の開発
  • 中課題整理番号:330a0
  • 予算区分:交付金、競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:松本光、生駒吉識
  • 発表論文等:Matsumoto H. and Ikoma Y. (2012) J. Agric. Food Chem. 60(39):9900-9909