北海道向け低アミロース米を利用した食感の柔らかい新玄米食品
要約
北海道向け低アミロース米に由来するアミロース低減化遺伝子Wx1-1またはqAC9.3を持ち、アミロース含有率が約12~14%の玄米を氷結乾燥技術で加工すると、家庭用炊飯器ですぐに炊飯でき、食感が白米の様に柔らかい画期的玄米食品が製造できる。
- キーワード:水稲、玄米食品、氷結乾燥、低アミロース米、食感
- 担当:北海道農研・米品質研究チーム、パン用小麦研究チーム、機能性利用研究北海道サブチーム、低コスト稲育種研究北海道サブチーム
- 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
- 区分:北海道農業・水田・園芸作
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
玄米は種皮と胚芽を含むため、食物繊維やビタミン、ミネラル(灰分)を豊富に含む健康志向型の食品である。玄米の種皮と胚芽は硬いため、炊飯する前には水に一昼夜程度浸漬した後に炊飯することが多いが、その場合でも炊飯した玄米の食感は白米に比べて非常に硬いという欠点がある。また業務用圧力釜で炊飯し食感を改善することも可能であるが、一般家庭には不向きである。そこで、浸漬処理や特殊な器具を用いることなく家庭用炊飯器ですぐに炊飯でき、玄米の高い栄養価を維持しつつ食感の柔らかい画期的な新玄米食品を提供するため、新たな加工法を検討し、その加工法に適する水稲の特性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- うるち米の玄米を道内企業で開発された氷結乾燥技術(図1)で加工すると、機能性成分である食物繊維、ビタミンE、GABA(ギャバ)を白米より多く含み、浸漬処理や業務用圧力釜を用いることなく、家庭用炊飯器で水をいれただけですぐに炊飯できる新たな乾燥玄米を製造できる(表1、図2)。
- 水稲のうち、北海道向け低アミロース米品種「おぼろづき」に由来するアミロース低減化遺伝子Wx1-1または低アミロース米系統「北海PL9」に由来するqAC9.3を持ち、原料玄米のアミロース含有率が約12~14%の品種・系統を本氷結乾燥技術で加工して炊飯した場合に、炊飯白米に近い柔らかさで官能評価の非常に高い玄米食品が得られる(表1)。
- 炊飯前の3000気圧の超高圧処理により、低アミロース米の炊飯後の玄米の柔らかさが向上するが、粘りが強すぎ、総合評価は超高圧処理をしないものより劣る(表1)。
成果の活用面・留意点
- 平成23年度より、本研究の方法で製造した種々の形態の新規乾燥玄米食品が一般に販売される予定である。
- Wx1-1を保有する水稲品種には「おぼろづき」、「ゆきがすみ(北海300号)」、「ゆめぴりか」があり、qAC9.3を保有する水稲品種には「ゆきさやか(北海302号)」がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:イネゲノム解析に基づく品質形成生理の解明と育種素材の開発
- 中課題整理番号:221d
- 予算区分:基盤、委託プロ(加工)
- 研究期間:2006~2010年度
- 研究担当者:船附稚子、松葉修一、横上晴郁、黒木慎、山内宏昭、野田高弘、瀧川重信、新津正夫((有)丹頂の舞本舗)、阿部邦信((有)丹頂の舞本舗)、新津有輝子((有)丹頂の舞本舗)