時間制限放牧とオーチャードグラス採草兼用地利用による省面積な放牧システム
要約
畑地型酪農地帯では時間制限放牧により昼夜放牧の1/3~2/3の面積で放牧を導入でき、採草兼用地の草種をチモシーからオーチャードグラスとすると、さらに面積を削減可能である。通年舎飼よりも労働時間が126~148時間減り、所得が53~91万円増える。
- キーワード:オーチャードグラス、兼用地、時間制限放牧、乳牛、メドウフェスク
- 担当:北海道農研・集約放牧研究チーム、北海道農業経営研究チーム
- 代表連絡先:電話011-857-9260
- 区分:北海道農業・畜産草地、畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
北海道内で多く利用されるチモシー(TY)よりも夏以降の再生力が優れるメドウフェスク(MF)の放牧採草兼用利用と、面積あたり栄養収量に優れるトウモロコシサイレージ(CS)の利用とを組み合わせた昼夜放牧システムが、畑地型酪農地帯向けに確立されている。しかし、農地価格が高い地帯に放牧を普及するためにはさらに省面積な方式が求められる。そこで、CS利用を前提に、MFを放牧専用地用草種、採草収量がMFよりも優れるオーチャードグラス(OG)を採草兼用地用草種とする時間制限放牧システムを構築し、経営評価を行う。
成果の内容・特徴
- 放牧期間中もCSを給与した研究所内および放牧酪農経営での調査結果(表1)等から、時間制限放牧時の放牧草採食量(乾物)は、半日(昼間または夜間のみ)放牧では8kg、3時間放牧では4kgが目安となる。
- 北海道十勝地区の酪農経営内放牧地で測定したOGの日再生量は、7月以降、MFと同等であり、TYよりも高い。これに基づき、放牧専用地の草種はMF、兼用地の草種はOGとする放牧計画の概要を示す(表2)。
- 表1および表2のデータにより、乳量9500kg水準の経産牛1頭を1年間飼養するために必要な圃場面積を算出したところ、放牧地面積は時間制限放牧により減らすことができ、昼夜放牧に対して半日放牧では2/3、3時間放牧では1/3となる。また、兼用地草種としてOGを選ぶことにより、TYよりも兼用地面積を減らすことができ、MFよりも採草専用地面積を少なくできる(表3)。
- 以上に基づき、経産牛60頭・従事者3名規模の通年舎飼経営(乳量9500kg)に兼用地草種をOGとする時間制限放牧を導入する場合、労働時間は、飼料給与、牧草の収穫調製および糞尿処理作業が軽減されるため126~148時間減る。また、所得も、購入飼料費、家畜診療費等が低下するため、53~91万円向上することが期待される(表4)。
成果の活用面・留意点
- 畑地型酪農地帯において、牛舎周辺に草地の集積が難しい経営に放牧導入を図る際に活用できる。
- 越冬条件が特に厳しい地帯での兼用地草種はTYとし、時間制限放牧による効果を活かす。OGは徒長による栄養価や嗜好性の低下が発生しやすいため、やや強い放牧強度で利用する。
- 放牧飼養および舎飼飼養とも、粗飼料給与量はほぼ上限とした上での比較である。
- 本成果は平成22年度北海道農業試験会議(成績会議)において、「時間制限放牧と草種組合せによる畑地型酪農向け省面積放牧システム」(指導参考)として採択されている。
具体的データ




その他
- 研究課題名:地域条件を活かした健全な家畜飼養のための放牧技術の開発
- 中課題整理番号:212d.1
- 予算区分:委託プロ(えさ・国産飼料)、所特定
- 研究期間:2006~2010年度
- 研究担当者:須藤賢司、藤田直聡、篠田満、松村哲夫、梅村和弘、秋山典昭、朝隈貞樹、上田靖子、渡邊也恭、山崎武志