道央地域で11月に播種するホウレンソウの冬季無加温栽培と3月の寒締め
要約
北海道の道央地域において、ハウスの保温を強化すれば、夏作終了後の11月中旬に播種し、3月に収穫するホウレンソウを無加温栽培できる。出荷サイズに生育する3月上旬以降にハウスを開放する寒締め操作を施せば、高糖度のホウレンソウが収穫できる。
- キーワード:保温、断熱シート、ホウレンソウ、冬季無加温栽培、寒締め
- 担当:北海道農研・北海道水田輪作研究チーム
- 代表連絡先:電話011-857-9260
- 区分:北海道農業・水田・園芸作
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
北海道では冬季の農業就労機会拡大への要望が大きい。加温すれば冬季栽培もできるが、一般に加温コストに見合う価格設定は困難である。そこで保温を強化しつつ無加温での冬季栽培の可能性を検討する。ここでは、保温カーテンと高発泡ポリエチレン断熱シートを用いてハウスの保温を強化して、夏作終了後の11月中旬播種・3月収穫とするホウレンソウを無加温栽培し、さらに3月に寒締め操作を施すことでの高糖度化を試みる。
成果の内容・特徴
- 本成果は、北農研(道央・札幌市)所内のパイプハウスで、常設する保温カーテン(農ビ、0.05mm厚、1層)に加え、夜間は高発泡ポリエチレン断熱シート(3mm厚、片面アルミ付)で作物を被覆する保温強化を施して、ホウレンソウ「まほろば」を冬季に無加温栽培した結果である(写真1)。
- 断熱シート内の気温は、外気温より平均で8°C以上高く推移し、外気温が-20°C近くに低下しても、寒害が生じないとされる-10°C以上の気温が確保される(表1)。
- その結果、ホウレンソウを夏作終了後の11月中旬に播種しても、3月上旬には出荷サイズ(地上部株重30g以上)にまで生育する。保温強化のない条件下での生育は、出荷サイズに到達しない(表2)。
- 道央地域における3月の外気温はまだ低く、ハウスを開放して寒気に曝す寒締め操作を施せば、数日~10日で糖度10度を超えるホウレンソウの収穫が可能になる(図1)。
成果の活用面・留意点
- 利用した断熱シートは、幅1m×50m巻の製品であり、実際の利用には接合等の加工を要する。購入価格は約2万2千円/巻である。
- 本成果は道央地域(札幌)におけるもので、より寒冷な地域においては、同等の保温を施しても、生育遅延や寒害が生ずる可能性がある。
- 保温条件下で生育したホウレンソウは、糖度が低く低温に弱い。3月の外気温はまだ低く、外気に曝す寒締め操作を急激に行うと、寒害を生ずることがある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:北海道地域における高生産性水田輪作システムの確立
- 中課題整理番号:211k.1
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2006 ~ 2010 年度
- 研究担当者:向弘之、松田周