2010年におけるバレイショ塊茎の中心空洞発生の品種間差
要約
2010年のバレイショ塊茎内部に生じる中心空洞の発生は、従来の発生程度を大きく上回る。中心空洞の発生率は、高い品種では30%以上から、低い品種では全く発生しないなど大きな品種間差がある。また、大きな塊茎ほど発生率は高くなる。
背景・ねらい
バレイショにおいて、中心空洞の発生は外観からは判別できず、調理時の食味を損ね異常部位の除去には手間がかかることから消費者や加工業者のクレーム対象となる(図1)。そのため、中心空洞が生じたバレイショは規格外品となり、生産現場では中心空洞の発生を低く抑えることが求められる。しかしながら、中心空洞の発生は年度により大きく異なり、同一年に多品種を比較した詳細なデータは少ない。2010年夏の気象は中心空洞の多発が予想されることから、北海道での栽培面積上位10品種および近年育成の7品種・系統について、中心空洞の発生状況を調査し品種間差を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 2010年の北海道十勝地方における7月から8月の平均気温は平年に比べ高く経過し、8月12日には乾燥条件下で100mm近くの降雨があるなど中心空洞の多発条件が揃っている(図2)。また中心空洞の形態は、塊茎中央に変色を伴う空洞および変色がなく裂け目のような空洞の2タイプが発生している(図1)。
- 北海道で栽培されるバレイショ品種において、規格L(120~189g)の塊茎を調査すると、中心空洞の発生率は大きな品種間差がみられる(表1)。
- 2010年の中心空洞の発生率は非常に高く、中心空洞の発生程度が従来“無”とされる「メークイン」、“微~少”とされる「男爵薯」においても発生率が高くなっている(表1)。その一方で、従来“無”とされ、2010年においても発生のない「さやか」、「スノーデン」等のように中心空洞がほとんど発生しない品種がある(表1)。
- 反復の確保できた10品種について、中心空洞発生率の有意差検定を行うと、「男爵薯」では特に発生率が高く、明確な品種間差が存在する(表1、圃場A)。同一品種であっても圃場が異なると中心空洞の発生程度は異なるが、発生程度の序列は維持されている(表1)。
- 塊茎の規格別に発生率を調査すると、塊茎が大きいほど発生率が高くなる傾向がある(表2)。中心空洞の多発する規格は品種により異なり、「男爵薯」は規格Lから、「トヨシロ」は規格2L(190~259g)から中心空洞が多発するが、「ホッカイコガネ」、「スノーデン」では規格が大きくなっても中心空洞の発生塊茎数は少ない(表2)。
成果の活用面・留意点
- バレイショ栽培における品種選定の基礎的な知見として利用できる。
- 北海道農研芽室圃場における2010年の単年度成績である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:病虫害複合抵抗性品種を中核とした新栽培体系による馬鈴しょ良質・低コスト生産技術の開発
- 中課題整理番号:211e
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2010 年度
- 研究担当者:西中未央、津田昌吾、森元幸