バレイショ種いものジベレリン浸漬処理によるいも数と小粒塊茎の増加
要約
植付前のバレイショ種いもをジベレリンにて浸漬処理すると、萌芽期が早くなり、茎数が増加する。株当りいも数が増加し平均1個重が小さくなることにより、収量を低下させることなく全粒規格に適合する小粒塊茎の割合が増加する。
背景・ねらい
現在流通しているバレイショ種いもは40~229gの規格幅があり、2つ切りを基本とし小さな種いもは全粒とし大きな種いもは4つ切りとして使用されている。そのため植付け前には種いもの切断作業を行い、多大な労力を要している。一方、省力化と収穫物の規格歩留り向上を目的として導入されたソイルコンデショニング体系や砕土装置付培土機等による新栽培体系は、切断作業のない全粒種いもの使用を基本とする体系が望ましく、全粒種いもの供給を必要とする。従来行われている浴光催芽処理は、萌芽を均一にし生育を前倒しとするがいもの小粒化は認められていない。そこで収量を低下させることなく小粒化を図るため、いもの休眠を打破し頂芽優勢を崩す効果のあるジベレリンを利用し、小粒塊茎の増加による全粒種いも規格割合の増加を図ることを目的とする。
成果の内容・特徴
- 植付前2週間の種いもを、30秒間5~20ppmでジベレリン浸漬処理(GA処理)して慣行の明所・室温管理することにより、頂芽優勢を崩して側芽の伸長を促すことができる(図1)。
- GA処理により、植付後の萌芽期が早まる傾向があり、株当りの茎数は増加する(表1)。
- GA処理により、株当りいも数が増加し、平均1個重は小さくなる。収量(上いも重)は変化しないもしくは増加傾向にあり、でん粉価は変化しない(表1)。
- 種いも生産においてGA処理は、収量を低下させることなく平均1個重を小さくし株当たりいも数が増加し、小粒規格割合が増加する(表2)。
- 生育途中の地上部および収穫物の観察において、高濃度(20ppm)のGA処理区でも薬害を認められない(表1)。
成果の活用面・留意点
- ジベレリンの植物生長調節剤としての利用は、バレイショ種いも適用について適用拡大の登録手続を開始したところであり、登録までは一般栽培に使用できない。
- 現状のバレイショ栽培では、40g~80gの種いもを全粒として利用している。しかし、確保された種いもの数量や大きさによって、全粒利用の規格幅は変更される。
- 新栽培体系では、大きな種いもほど株間を広げる栽植密度調整を行い、可能な限り大きな種いもを全粒として利用すると想定している。このとき、平均1個重が小さくなれば単位重量あたりのいも数が増加し、より多くの株数を確保できる。
- 通常栽培でも小さな規格が求められる場合に、GA処理は適用可能である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:病害虫複合抵抗性品種を中核とした新栽培体系による馬鈴しょ良質・低コスト生産技術の開発
- 中課題整理番号:211e
- 予算区分:委託プロ(水田底力)
- 研究期間:2009 ~ 2010 年度
- 研究担当者:森元幸、山田龍太郎、今村講平(種管セ)、辻哲正(種管セ)、松本明彦(種管セ)、天野克幸(種管セ)、仁坂悟(種管セ)