低温灰化による鶏糞焼却灰中のリン酸溶解性の向上
要約
鶏糞焼却灰の2%クエン酸水溶液によるリン酸溶解性は、400~500°Cの低温灰化で最大となり、現行の700~800°Cの高温灰化に比べリン酸の普通肥料としての法定保証成分量が多くなる。
- キーワード:鶏糞、焼却灰、リン酸、溶解性、灰化温度
- 担当:北海道農研・北海道水田輪作研究チーム
- 代表連絡先:電話011-857-9260
- 区分:北海道農業・水田・園芸作
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
鶏糞焼却灰は約20~25%のリン酸(以下すべてP2O5として記載)を含有し、リン酸質肥料の一部を代替する資材として注目されている。肥料取締法において、副産リン酸肥料では「ク溶性リン酸を保証するものにあっては15.0%以上であること」と定められているが、現行の鶏糞焼却灰はクエン酸に対する溶解性が低く、法定の保証成分量を満たしていない。普通肥料としての利用の促進のためには保証成分量の向上が必要である。現行の燃焼炉での700~800°Cでの高温灰化が溶解性低下をもたらしていると考え、焼成温度に注目してリン酸の溶解性を調査し、併せて水稲の幼植物試験によって肥効を検討する。
成果の内容・特徴
- 焼成によって水分が失われ有機物が燃焼して減量するので、焼却灰の単位重量に含まれる全リン酸は焼成温度が高くなるに従い多くなる(図1)。
- 水溶性リン酸は焼成温度が高いほど不溶化する(図1)。
- 2%クエン酸水溶液に溶解するリン酸は、焼成温度400°Cまでは減量濃縮の効果が認められ、500°Cを超えると溶解性が低下し600°C以上で15%を下回る(図1)。
- 400~500°Cで焼成した鶏糞焼却灰(ク溶性リン酸が15%以上)を施用した場合に水稲の幼植物地上部重は高い値を示す(図2)。
成果の活用面・留意点
- 低温灰化による鶏糞焼却灰は溶解性を増すための化学的な処理を含まない。
- 鶏糞焼却灰はアルカリ度が高く、他の肥料と混用する場合は留意が必要である。
- 灰化によるダイオキシン類の発生は確認していない。
具体的データ


その他
- 研究課題名:地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立
- 中課題整理番号:211k.1
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2006~2010 年度
- 研究担当者:君和田健二、辻博之、林怜史、宮浦寿美、澁谷幸憲