北海道における赤さび病抵抗性準同質遺伝子系統の評価

要約

硬質春まき小麦「Thatcher」の赤さび病抵抗性準同質遺伝子系統の本病発生程度および品質の評価結果から、北海道で赤さび病に対する有用遺伝子源として活用できるものはLr9Lr18等を有する11系統である。

  • キーワード:コムギ、赤さび病抵抗性遺伝子、Thatcher、準同質遺伝子系統
  • 担当:北海道農研・パン用小麦研究チーム
  • 代表連絡先:電話011-857-9260  電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畑作
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

  赤さび病は北海道ではコムギの重要病害の一つであるが、近年薬剤防除の徹底により目立った被害はみられていない。しかし、高温年等赤さび病の発生が多い年次では、適期防除を逸した場合収量および品質の低下することが危惧されている。また、抵抗性品種の罹病化もおきているが、赤さび病について北海道では十分な研究は行われていない。そこで、種属間交配等によりカナダで育成された、硬質赤粒春まき小麦「Thatcher」を反復親とする赤さび病抵抗性準同質遺伝子系統を供試して、圃場における赤さび病の発生程度を調査する。さらに、品質特性等を評価し、北海道における赤さび病抵抗性育種に利用できる有用遺伝子を明らかにする。
 

成果の内容・特徴

  • 北海道農業研究センター芽室研究拠点圃場において、薬剤防除を実施しないことにより自然感染させる。出穂期・成熟期ともほぼ斉一である準同質遺伝子系統の赤さび病の発生程度を出穂期後約4週間目に病斑面積で調査を行う(表1)。
  • 赤さび病の発生程度には試験年次により差はみられるが、4か年とも系統間における発生程度の差は明瞭である。4か年の中では、2010年は登熟期間が高温で、発生は著しい(図1)。
  • 34系統中、4か年とも病斑面積が実質的な減収を伴わないとされる30%以下で、抵抗性と判断できるものは、Lr9Lr18等を有する11系統である(図1)。
  • Lr25を有する系統は千粒重が「Thatcher」よりも小さく、Lr23を有する系統は千粒重が大きい。Lr19Lr21Lr23Lr24Lr25を有する系統は製粉歩留が低い。Lr29を有する系統は粉蛋白量が低く、製パン適性と相関が高いSDS沈降量も低い。Lr19を有する系統は色彩色差計のb*(黄色み)が極めて高い(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 反復親である「Thatcher」とは品質特性が大きく異なる系統がある。

具体的データ

表1 準同質遺伝子系統の保有する赤さび病抵抗性遺伝子

図1 供試材料の年次ごとの赤さび病発生程度

表2 赤さび病抵抗性系統の抵抗性遺伝子の導入源、千粒重および品質特性

その他

  • 研究課題名:実需者ニーズに対応したパン・中華めん用等小麦品種の育成と加工・利用技術の開発
  • 中課題整理番号:311c
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2003~2005、2010年度
  • 研究担当者:田引 正、西尾善太、伊藤美環子、長澤幸一、山内宏昭