ダイズ萎縮病の褐斑粒率と種子伝搬率を減少させるサテライトRNA
要約
キュウリモザイクウイルス(CMV)のサテライトRNA sat28-19は、ダイズ萎縮病に対し草丈および子実への病徴を軽減する弱毒効果を有する。特に、白目黄大豆「鶴の子」、「トヨハルカ」での褐斑程度および種子伝搬率を大幅に減少させる。
- キーワード:ダイズ、萎縮病、キュウリモザイクウイルス、サテライトRNA、褐斑粒
- 担当:北海道農研・北海道畑輪作研究チーム、中央農研・病害抵抗性研究チーム
- 代表連絡先:電話011-857-9260
- 区分:共通基盤・病害虫、北海道農業・生産環境
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
国内で栽培されているダイズの多くは、種皮の黄色い黄大豆である。ダイズがキュウリモザイクウイルス(CMV)ダイズ系統に感染すると、種皮への着色が生じ、品質を大きく損なうだけでなく、種子伝染による蔓延も懸念される。CMVダイズ系統には、他作物のウイルス病防除に使われているような弱毒ウイルスはない。
そこで、CMVダイズ系統によるダイズ萎縮病の防除に資する目的で、既にトマトで高い弱毒効果を示すことが知られているサテライトRNA sat28-19のダイズ萎縮病に対する病徴軽減効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- CMVサテライトRNA sat28-19(Accession No.AB072503)は、黄大豆品種「鶴の子」、「農林2号」、「トヨハルカ」においてCMVダイズ系統(CMV-SA)感染ダイズの草丈での病徴を軽減する(表1)。
- CMVサテライトRNA sat28-19は、CMV-SA感染により黄大豆品種「鶴の子」、「農林2号」、「トヨハルカ」に生じる褐斑粒の着色程度を明らかに減じる効果を示す(表2、図1)。
- CMVサテライトRNA sat28-19は、CMV-SAの種子伝搬率を1/10以下に減少する(図2)。
成果の活用面・留意点
- 本成果は、ウイルス感染によるダイズ種子の品質低下軽減およびダイズ萎縮病防除技術開発の基盤となる。
- sat28-19の弱毒効果およびCMV-SAが本来保有しているサテライトRNA SA-satとの競合関係は品種により異なる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:地域条件を生かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立
- 中課題整理番号:211k.2
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2006~2010年度
- 研究担当者:早野由里子、眞岡哲夫