普通黒ボク土輪作畑の土壌炭素蓄積量に及ぼす省耕起と有機物投入の効果
要約
北海道・十勝地域の普通黒ボク土輪作畑において、土壌炭素蓄積量は収穫残さや堆肥などの有機物投入により増加し、耕起法の影響は小さい。これらの有機物投入は、後年の作付けにおける収穫残さ発生量を増加させ、土壌炭素蓄積量の増加に寄与する。
- キーワード:温暖化緩和策、土壌炭素蓄積、普通黒ボク土、収穫残さ、堆肥施用
- 担当:北海道農研・寒地温暖化研究チーム
- 代表連絡先:電話011-857-9260
- 区分:北海道農業・生産環境、共通基盤・土壌肥料
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
農業分野が貢献できる温暖化緩和策として、農耕地土壌の炭素蓄積(土壌炭素蓄積量の減少緩和による相対的な炭素蓄積)に大きな期待が集められている。本研究では、北海道農業研究センター・芽室研究拠点(普通黒ボク土)において、土壌管理法の違い(耕起法および有機物投入)が土壌炭素蓄積量に及ぼす影響を評価し、黒ボク土輪作畑の土壌炭素蓄積に有効な土壌管理法を明らかにする。また、作物収量や収穫残さ発生量に対する土壌管理法の影響についても調査する。
成果の内容・特徴
- 収穫残さを持ち出すと土壌炭素蓄積量は大きく減少するが、収穫残さや堆肥(麦わら牛糞堆肥;20 t/ha/yr)からの有機物投入量が増加すると土壌炭素蓄積量の減少は緩和される(図1)。有機物投入は、土壌炭素蓄積量に対して有意な(P<0.05)影響を及ぼす(表1)。
- 耕起法の土壌炭素蓄積量に対する効果は有意でない(表1)。
- 有機物投入は、すべての作物の収量に対して有意な効果を示す(表1、図2)。省耕起では、表層土壌の養分含有率が高まり、生育期間が比較的短い春コムギとバレイショでは、収量が有意に増加する。
- 有機物投入量の増加は、すべての作物において収穫残さ発生量を有意に増加させる(図1、表1)。すなわち、収穫残さ還元と適切な量の堆肥施用による有機物投入は、後年の作付けにおける収穫残さ発生量を増加させ、土壌炭素蓄積量の増加に寄与する(図3)。
成果の活用面・留意点
- 栽培法の改善によって土壌炭素蓄積量の減少緩和が起こる場合、緩和された分の土壌炭素蓄積量が二酸化炭素吸収量としてカウントされる。
- 慣行耕起は、収穫後にプラウ耕起(耕起深約25cm)および春先に砕土・整地(同約13cm)を行い、省耕起は、春先に整地(同約13cm)のみを行う耕起法である。
- 試験作物の栽培は、2003~2006年に行い、土壌炭素蓄積量の評価は、2003~2007年に採取した土壌について実施した。
- 試験開始時(2003年6月)における土壌(0~30cm深)の容積重および全炭素含有率の平均値は、それぞれ0.89g/cm3および3.44%である。
- 5.試験開始時の乾燥土壌量と同じになるように、2004年以降、評価する土壌の厚さを補正し、容積重の時間的変化が土壌炭素蓄積量に及ぼす影響を排除している。
具体的データ




その他
- 研究課題名:気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
- 中課題整理番号:215a.1
- 予算区分:委託プロ(温暖化)
- 研究期間:2003~2007年度
- 研究担当者:古賀伸久、辻博之
- 発表論文等:Koga N., Tsuji H (2009) Soil
Sci. Plant Nutr. 55(4): 546-557