十勝中央部、周辺部における集落構造と農地流動化
要約
十勝中央部では1戸当たり規模が小さい集落構造の下、離農跡地の移動先は多数農家となり、農地も細分化される。周辺部では一戸当たり規模が大きな集落構造の下、離農跡地の移動先は少数の小規模農家となり、団地として配分される。
背景・ねらい
近年の十勝畑作地域では再び規模拡大が進んできている。このなか、中央部、周辺部では30ha前後層が厚い下で規模拡大志向者も多く、その競争緩和のために農村集落、農業委員会による農地調整が働いている。これは離農跡地を分割しつつ、集落内の隣接農家優先(農地の団地化)、小規模農家優先(規模の底上げ・平準化)という2つの農地配分を内容とする。だが、集落構造の違いにより、同調整のあり方は違いを見せると思われる。
そこで集落構造の基本類型を抽出しつつ、十勝X町中央部から1戸当たり25haの小規模・Y集落、及び同町周辺部から1戸当たり50ha近い大規模・Z集落を対象とし、農地流動の実態を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 農家階層構成として、十勝中央部では離農発生が緩慢なため、20~30ha層をモードとし、作付け限界規模とされる50ha超の展開が遅延している。一方、周辺部では生産 力が低いために離農が進み、1ランク上の30~40ha層をモードし、50ha以上層の展開 も進んでいる。以上を集落構造として見ると、相対的に小規模な農家が厚い中央部と、 規模の大きい農家が厚い周辺部、とに類型化される(図1)。
- X町中央部の小規模・Y集落は1戸当たり規模が小さい集落(25.9ha)から、中規模 集落(31.9ha)へ変化する。そこでの農地流動化として、離農跡地は分割度合いが著しく、集落のほとんどの農家への配分となっている(図2)。
- X町周辺部の大規模・Z集落は1戸当たり規模が大きい(43.5ha)が、さらに大規模化(48ha)が進む。そこでの農地流動化として、離農跡地は小規模農家2戸、かつ隣接農家1戸への配分となっている(図3)。
- 集落構造と農地流動化の関連は次のように示される(図4)。
Y集落では離農が少なかったため、農家数は多く規模も全体的に小さい。従って、農 地流動化の際、農村集落、農業委員の配分論理としては隣接農家より、集落農家全体の規模底上げを優先する。そのため離農跡地は多数農家への配分となり、農地も細分化される。
Z集落では離農が多かったため、農家数が少ない反面で規模は大きく、上位層では既 に50ha前後に到達している。従って、集落、農業委員の配分論理としては残る小規模農家の底上げ、及び大規模化の中での土地利用の効率性から隣接農家を優先する。そのため、離農跡地は少数農家への配分となり、農地も団地化される。
成果の活用面・留意点
大型経営(100ha超等)展開の集落、及び山麓・沿海部では別途の検討が必要である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:地域の条件を活かした水田・畑輪作を主体とする農業経営の発展方式の解明
- 中課題整理番号: 211a. 1
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2006 ~ 2010 年度
- 研究担当者:細山隆夫、若林勝史
- 発表論文等:細山、若林(2010)北海道農業研究センター農業経営研究、(103):1-62