デンプン枝付け酵素1活性を欠く糯イネ系統は餅の硬化が遅い

要約

陸稲品種「Kurnai」、「旱不知D」はデンプン枝付け酵素1(Sbe1)活性を欠き、アミロペクチン短鎖比率が高い。この特徴を有する糯性系統の餅は柔らかさに優れ、餅の硬化が遅い。

  • キーワード:アミロペクチン、米、デンプン枝付け酵素1、餅硬化性
  • 担当:作物開発・利用・水稲品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・寒地作物研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

餅が硬くなりにくい糯イネ品種の開発は、添加物なしで柔らかさを保つ餅や餅菓子のニーズに応えるとともに、新たな食品への利用につながる可能性がある。陸稲在来品種のスクリーニングから、デンプン糊化温度の低い「Kurnai」および「旱不知D」が茨城県生工研において選抜された。これら品種のデンプン特性によって餅の硬化を抑えられる可能性がある。そこで、このデンプン特性を調査するとともに、交配によって同特性を取り込んだ糯系統を育成して餅の硬化抑制効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 陸稲粳在来品種「Kurnai」と「旱不知D」は、自然変異によりデンプン枝付け酵素1(Sbe1)の活性を欠く(図1に「Kurnai」のデータを示す)。
  • 「Kurnai」と「旱不知D」は、アミロペクチンの短鎖が「コシヒカリ」より多い(図2)。
  • 「Kurnai」と陸稲糯品種「ナエバハタモチ」の交配後代(F5)の糯系統は、Sbe1活性保持系統とSbe1活性欠損系統に分かれる(図1)。
  • Sbe1活性欠損系統のアミロペクチン短鎖比率は、Sbe1活性保持系統および交配親の「ナエバハタモチ」より高く、餅の硬化も遅い(図3A、B)。
  • 水稲品種「台中65号」の糯性変異系統と、糯性変異かつSbe1遺伝子変異系統の餅硬化性を比較した結果も、Sbe1活性欠損が原因で餅の硬化が遅く柔らかさが保持されることを示唆している(図4)。

成果の活用面・留意点

  • Sbe1活性欠損性の「Kurnai」、「旱不知D」およびSbe1遺伝子変異の台中65号糯性系統は、柔らかい餅、餅菓子等への加工を目的とした糯品種の育成素材として有用である。
  • Sbe1活性欠損性は、デンプンの糊化開始温度のほか、アミロペクチン鎖長分布、Sbe1活性によって選抜可能である。
  • 「Kurnai」、「旱不知D」のSbe1活性欠損の原因変異点は未同定である。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:米粉等加工用・業務用水稲品種の育成及び米の未利用成分利用技術の開発
  • 中課題番号:112a0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(加工プロ)、科研費
  • 研究期間:2005?2012年度
  • 研究担当者:梅本貴之、岡本和之(茨城生工研)
  • 発表論文等:Okamoto et al. (2013) J. Appl. Glycosci. 60(1):[印刷中]