抗張強度が2倍程度強い難脱粒ソバ系統「W/SK86GF」の開発と特性
要約
ソバ系統「W/SK86GF」は、通常のソバ品種・系統と比較し小果柄の抗張強度が2倍程度強い。「W/SK86GF」は、北海道の主要品種である「キタワセソバ」と比較し、コンバイン収穫適期において脱粒子実割合が少ない。
- キーワード:ソバ、脱粒、育種素材、台風、コンバイン収穫
- 担当:ブランド農産物開発・資源作物品種開発・利用
- 代表連絡先:電話 011-857-9260
- 研究所名:北海道農業研究センター・畑作研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
ソバは子実が脱粒しやすく、強風あるいは降雨等で収穫適期を逸した場合、脱粒による減収が問題となる。そこで、成熟期後の脱粒が少ない品種の開発が望まれている。グリーンフラワータイプのソバは、花弁が緑色を帯びる(がく化する)突然変異体であり、小果柄抗張強度(種子単粒と植物体をそれぞれ固定後、種子を垂直方向に引っ張り、小果柄を切断した時の加重を測定)が増加していると報告されている。ソバの脱粒の主要因は小果柄が切れる現象であるため、小果柄抗張強度の増加は難脱粒特性につながると推測されている。そこで、北海道農業研究センターにおいてグリーンフラワータイプのソバ系統を開発するとともに、小果柄の抗張強度、成熟期及びコンバイン収穫適期となる成熟期+15日における難脱粒の程度を明らかにした。
成果の内容・特徴
- 「W/SK86GF」は、「キタワセソバ」と「skorosperaya86」の交配後代に出現したグリーンフラワータイプの突然変異個体を選抜し、花弁の緑色を指標に後代を選抜・固定した系統である。
- 「W/SK86GF」の成熟期における小果柄の抗張強度は、他のソバ品種・系統と比較し2倍程度強い(図1)。
- 「W/SK86GF」は「キタワセソバ」と比較し、花弁と小果柄の形態が異なる(図2)。
- 「W/SK86GF」の小果柄の抗張強度は「キタワセソバ」と比較し、コンバイン収穫適期となる成熟期+15日において3倍程度強く脱粒子実割合は少ない(図3)。
- 台風による強風害で道内作況が57となった2004年においては、成熟期+15日における「W/SK86GF」の脱粒子実割合は、「キタワセソバ」の21.1%に対し2.6%とかなり少ない(図3)。
成果の活用面・留意点
- 手刈り収穫による結果である。
- 「W/SK86GF」は「キタワセソバ」と比較し難脱粒特性は優るが、子実重、千粒重、容積重は劣るため、育成素材として活用する。
- 抗張強度が増加する形質は劣性単一因子支配である。
具体的データ
その他
- 中課題名:高付加価値を有する資源作物品種の育成と新規作物の評価・活用
- 中課題番号:320d0
- 予算区分:交付金、委託プロ(水田底力)
- 研究期間:2003~2012年度
- 研究担当者:鈴木達郎、六笠裕治、森下敏和
- 発表論文等:
1)Mukasa et al.(2008)Fagopyrum 25:15-25
2)Suzuki et al.(2012)Breed.Sci. 62:360-364
3)Suzuki et al.(2012)Fagopyrym 29:13-16