大豆加工業者と生産者の直接取引を支援する「Soya試算シート」

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要約

本シートは大豆生産者と加工業者の直接取引を想定した価格決定を支援するツールである。地域名、単収、作付面積の入力と生産者の受領可能な交付金選択により、生産者の交付金込みの粗収入と加工業者の購入価格を同時に表示し、取引を円滑に進められる。

  • キーワード:ダイズ、加工業者、直接取引
  • 担当:九州沖縄農研・異業種連携研究チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-7695
  • 区分:九州沖縄農業・フードシステム、共通基盤・経営
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

北部九州は「フクユタカ」「むらゆたか」のみ集荷するJAが大半である中、一部加工業者は、特徴のある大豆を用いた商品や地域名を冠したブランドを作るため、原料供給を確実にするため、などの理由から生産者と直接取引を行う意向が強い。しかし、生産者が大豆を生産するかは、交付金を加えた生産者の粗収入額に影響される。加工業者には大豆生産関連の交付金制度が分かりにくく、価格決定が難しいばかりか、取引成立へ支障がある。そこで、制度への理解を進め、加工業者と生産者が満足しつつ、産地形成に目途を付けるため、取引をスムーズにするツールを開発する。

成果の内容・特徴

  • 「Soya試算シート」(以下、本シート)使用においては、最初に生産地として各市町村等の地域名、取引する大豆の収量を入力する。生産者は自動表示される交付金から受領できる項目を選択する(図1中央○×等記載部分)。加工業者側は希望する購入価格と作付面積を入力する(図1右)。
  • 本シートは各市町村等の地域ごとに異なる交付金の使途と金額について、マクロ(EXCEL VBA)を用いて、実装するデータベース内を検索して表示する(図1赤枠内)。選択に応じて生産者が受け取る交付金額(1 kg、60kg、10aあたり)を表示する。さらに、加工業者側の入力した価格等から生産者の粗収入、所得を表示する(図1下)。
  • 加工業者の提案する購入価格に対しての粗収入に生産者が納得すれば、スムーズに取引が妥結する。両者の希望に開きがある場合、本シートは、加工業者が希望する品種の場合とその地域における奨励品種を作る場合との粗収入を比較する、生産費と粗収入を比較する、等によって妥協を促すことができる(表1シート利用の効果欄)。本シートの使用は加工業者が、国産大豆の生産は各種交付金によって成立し、加工業者の希望に対応する結果、生産者が受取る交付金の額が大幅に変動することなど、生産の事情に対する理解を深める効果がある。
  • 郵送アンケートに回答した九州の豆腐製造業者の75%が大豆に関する交付金制度を分かりにくいと認識している。直接取引を実施中または希望している豆腐製造業者は20%に達し、その全回答者が本シートの使用を希望する(有効回答30件)。

成果の活用面・留意点

  • 加工業者と大豆生産者が直接取引を行うために活用できる。また、自治体、卸売業者生産者グループ等が大豆を用いた産地づくりを企画するためにも活用できる。
  • 農林水産省が刊行する大豆の生産費をおおよその所得の算出のため利用でき、さらに、クリック1回にてユーザーが設定する生産費と入替可能である。
  • 本シートは産地づくり推進交付金の使途を公開する地域にて利用できる。
  • 本シートはWindowsXP以降、Excel2000以降上にて動作を確認している。また、http://www.naro.affrc.go.jp/org/karc/second_term team/Collaboration/result.htmlからダウンロードできる。

具体的データ

図1 交渉中の状況の例示

表1 試算シートの現場における活用実績

その他

  • 研究課題名:豆腐メーカーと黒大豆生産組合との連携コンソーシアム
  • 課題ID:211a.5
  • 予算区分:基盤、委託プロ(加工プロ5系)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:笹原和哉、後藤一寿、相原貴之
  • 発表論文等:笹原、後藤(2006)農業経営研究、44(2):70-73