空気循環式ダイズ種子加湿装置

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要約

ダイズの播種直後の湿害を軽減し、出芽率の向上を図るため、ダイズ種子を簡便・安定的に加湿するための装置。内部にダイズ種子と水を入れ、冷却された加湿空気を循環させることにより、含水率10%のダイズ種子を24時間で15%へ加湿できる。

  • キーワード:種子予措、種子水分、調湿、ダイズ、播種
  • 担当:九州沖縄農研・九州水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話0942-52-3101
  • 区分:九州沖縄農業・水田作、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

ダイズは播種直後に大量の降雨に遭遇すると出芽障害を起こす危険性が高いが、種子含水率を13~15%に調整すると出芽障害を軽減できることが知られている。しかし乾燥している種子を加湿するための簡便で水分ムラの少ない実用的な方法は確立されておらず、普及の障害となっている。そこで作業者の熟練等を必要とせずに、種子を加湿できる装置を開発する。

成果の内容・特徴

  • 装置の外部構造は気密性のある断熱構造で、内部中段に種子を納める棚が、下部に加湿フィルタのある水受けがあり、ペルチェ素子による冷却装置とファンを内蔵する。これらにより装置単体で低温の加湿空気を循環させ、種子を加湿する(図1,2)。
  • 開発装置の処理量は30kgであり、種子の堆積高は10cmで、内部で循環させる空気の風量比は3.4m3/s・tである。
  • 種子を堆積させる底面を通気性緩衝材(本装置では人工芝)とすることにより、加湿時に膨張する種子の変形を抑える(図2)。
  • 加湿に必要となる水量は計算で求める。種子量M(kg)、投入時種子含水率a(%)、目標種子含水率b(%)とすると、水量W(kg)は以下となる。装置の気密性により、この水量の投入で過不足なく加湿できる。 (例:投入時種子含水率10%のダイズ30kgを15%に加湿するのに要する水量は1.8kg)
  • 加湿中に種子を攪拌する必要はなく、種子含水率10%のダイズを24時間で種子含水率15%に加湿でき、その際の加湿ムラは約1%以下となる(図3)。
  • 循環する内部の加湿空気は、冷却装置により外気温度より約9°C冷却される(図2)。
  • 播種後の湿害条件時には出芽障害が軽減する(図4)。開発装置は営農規模で宮崎等の現地で用いられ、正常な出芽・生育を確認している。

成果の活用面・留意点

  • 開発装置(処理量30kgの試作機)では10ha分の種子を約2週間で処理でき、営農集団やJA等で活用が期待できる。製品化にあたって、処理量の増減は可能である。
  • 加湿性能等はフクユタカを用いた結果である。
  • 種子加湿時の温度が20°Cを超えると加湿種子の耐湿害性が低下するので冷却が必要であり、種子加湿時の外気温度が20°C以下になる地域・条件なら冷却機構は不要である。
  • 加湿ムラが大きくならないよう、種子の堆積高は均一とする。
  • 本装置による加湿処理後に10°Cで密閉保存した場合、貯蔵期間1ヶ月程度であれば耐湿害性を維持出来る。

具体的データ

図1 種子加湿装置外観

図2 種子加湿装置概念

図3 加湿装置による種子含水率の推移

図4 湿害条件時出芽状況

その他

  • 研究課題名:九州地域における水田輪作システムの開発
  • 課題ID:211-k.8
  • 予算区分:基盤、委託プロ(加工、担い手)、
  • 研究期間:2005~2008年度
  • 研究担当者:土屋史紀、山下浩、田坂幸平、佐々木豊