トウモロコシ早生品種「ゆめちから」は収穫適期が長い

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要約

トウモロコシ早生品種「ゆめちから」は、収穫適期である乾物率が25~35%の期間が長く、期間を通して茎葉TDN含量、耐倒伏性も維持されている。収穫作業日程に柔軟に対応できるため、細断型ロールベーラ収穫体系の利点を一層活かすことができる。

  • キーワード:トウモロコシ、収穫適期、茎葉TDN含量、耐倒伏性、飼料作物育種
  • 担当:九州沖縄農研・周年放牧研究チーム
  • 代表連絡先:電話0986-24-4275
  • 区分:九州沖縄農業・畜産・草地、畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

収穫適期が長いトウモロコシは、刈り遅れる危険が少なく収穫作業日程に柔軟に対応できる。近年普及しつつある細断型ロールベーラ収穫体系においても、労力や作業時間にあわせて小面積ずつ収穫したり、突然の降雨の場合に原料草の品質を損なわないよう速やかに作業を中断できるなどの利点を一層活かすためには、収穫適期が長いトウモロコシ品種が適している。2003~2006年に生産力検定試験に供試した48品種・系統/年うち、収量、耐倒伏性が優れていた品種・系統について乾物率、茎葉TDN含量の推移を調査した結果から、早生品種「ゆめちから」の収穫適期が長いと考えられたため、同じ早生の優良品種「セシリア」と比較して、細断型ロールベーラ収穫体系における適性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 「ゆめちから」は、サイレージ調製に適した収穫物全体の乾物率が25~35%の期間(収穫適期)がおよそ3週間で、「セシリア」に比べて1週間以上長い。「ゆめちから」の収穫適期は黄熟初期からほぼ完熟期にあたる(図1)。
  • 「ゆめちから」は、密植栽培(栽植密度780本/a)では標準栽培(栽植密度670本/a)より耐倒伏性評価値(HPR値)が大きく耐倒伏性がやや低い傾向にあるが、収穫日によるHPR値の変化は少なく、収穫適期を通して耐倒伏性が維持されている(表1)。
  • 「ゆめちから」は、収穫適期を通して茎葉TDN含量(近赤外分析による推定値)が「セシリア」より高く、その結果、収穫物全体の推定TDN含量、推定TDN収量も高い(図2、表1)。収穫適期に細断型ロールベーラで収穫調製した「ゆめちから」のラップサイレージは、発酵品質が良く高消化性成分(OCC+Oa)含量もサイレージ調製前と同じく高い(表2)。
  • 「ゆめちから」は、収穫適期が長く、期間中の耐倒伏性やTDN含量・収量に優れている。収穫作業日程に柔軟に対応できるため、細断型ロールベーラ収穫体系の利点を一層活かすことができる。

成果の活用面・留意点

  • トウモロコシ早生品種「ゆめちから」の収穫適期が長いことは、新たな特性として品種普及に活用できる。
  • 「ゆめちから」は細断型ロールベーラ収穫体系にもより適した品種として推奨できる。

具体的データ

図1 収穫日による乾物率の変化

図2 収穫日による推定TDN含量の変化

表1 密植栽培での収穫日による推定TDN収量,HPR値の変化と倒伏個体率

表2 収穫日による「ゆめちから」の乾物率,消化性とサイレージ品質の変化

その他

  • 研究課題名:周年放牧による放牧(肥育)期間の延長と自給飼料資源を活用した肉用牛の育成・肥育システムの開発
  • 課題ID:212-d
  • 予算区分:交付金(基盤)、委託プロ(ブラニチ3系)、県単
  • 研究期間:2003~2008年度
  • 研究担当者:村木正則、 澤井 晃、小畑 寿(宮崎県畜試)、服部育男、江口研太郎
  • 発表論文等:1)村木ら(2007)日本草地学会九州支部会報、37(2):10-16