アジア地域のイネウンカ類には種特異的な薬剤感受性低下が見られる
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要約
トビイロウンカはイミダクロプリドに対して、セジロウンカはフィプロニルに対して種特異的に感受性低下が認められる。前者は東アジアとインドシナ半島で、後者は東~東南アジア地域で見られる。イミダクロプリドとチアメトキサムには交差抵抗性がある。
- キーワード:トビイロウンカ、セジロウンカ、アジア地域、殺虫剤抵抗性、微量局所施用法
- 担当:九州沖縄農研・難防除害虫研究チーム
- 代表連絡先:電話096-242-7731
- 区分:九州沖縄農業・病害虫
- 分類:研究・普及
背景・ねらい
2005年以降、インドシナ半島および東アジア地域(中国、韓国、日本)において、トビイロウンカの多発生が続いている。長距離移動性イネウンカ類の多発要因の一つとしてイネウンカ類の薬剤感受性の低下が指摘されている。しかし、アジア地域全域における薬剤抵抗性発達程度の現状については、各国で薬剤感受性検定が行われているものの、検定方法がまちまちで、相互比較に耐えうる正確なデータは得られていない。そこで、アジア地域各国からトビイロウンカとセジロウンカを採集し、最も正確で数値の相互比較が可能な手法である微量局所施用法によって薬剤感受性を検定する。
成果の内容・特徴
- トビイロウンカに対するイミダクロプリドのLD50値(半数致死薬量、薬剤有効成分μg/虫体g)は2001年まではアジア地域全域で0.1μg/g程度である(Nagata et al.、2001)。しかし、2006年のトビイロウンカに対するイミダクロプリドのLD50値は、東アジア地域とインドシナ半島で高く(図1)、薬剤感受性の低下がこの地域で起こっていることが示唆される。ただし、フィリピンでは感受性の低下は見られない。
- トビイロウンカに対するイミダクロプリドとチアメトキサム(共にネオニコチノイド系殺虫剤)との間には正の相関があることから、両薬剤に交差抵抗性が認められる(図1、図3)。
- 2006年のセジロウンカに対するフィプロニルのLD50値は、フィリピンの1系統を除いていずれも1~100μg/g以上と高く(図2)、東アジアから東南アジアの広域で薬剤感受性の低下が起こっていることが示唆される。
- BPMCのLD50値については、両種ともに地域間で明瞭な差は見られない(図1、図2)。
- トビイロウンカに対するフィプロニル、セジロウンカに対するイミダクロプリドのLD50値はどの地域においても低く、これらの種と薬剤の組合せでは感受性の低下は認められない(図1、図2)。
成果の活用面・留意点
- アジア地域におけるイネウンカ類防除対策および防除体系を見直す際の薬剤選定の基礎データとなる。なお、日本、中国、ベトナムにおいては、本成果情報を含めた一連の研究成果に基づいて防除体系の見直しが実施された。
具体的データ



その他
- 研究課題名:暖地における長距離移動性、新規発生等難防除害虫の発生メカニズムの解明
- 課題ID:214-h
- 予算区分:多国間ネットワーク事業、科振調、基盤
- 研究期間:2006~2008年度
- 研究担当者:松村正哉、竹内博昭、佐藤雅(横浜植防)、真田幸代、大塚彰(中央農研)、
渡邊朋也(中央農研)、Dinh Van Thanh(ベトナム植物保護研)
- 発表論文等:Matsumura M. et al. (2008) Pest Manag. Sci. 64: 1115-1121.