暖地水田作地帯における田畑共通雑草の発生状況

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要約

暖地水田作地帯においてタカサブロウ類、アゼガヤ、チョウジタデ、クサネム、アゼナ類、アメリカセンダングサは30%以上の水稲作圃場と大豆作圃場で発生し、この内タカサブロウ類は水稲作圃場で、アゼガヤは大豆作圃場で多発している。

  • キーワード:アゼガヤ、水田輪作、大豆作、タカサブロウ、田畑共通雑草、分布
  • 担当:九州沖縄農研・九州水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話0942-52-3101
  • 区分:九州沖縄農業・水田作、共通基盤・雑草
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

北部九州における大豆の栽培面積は毎年2万ha前後あり、その大半は水田転換畑である。主産地である福岡県および佐賀県では、大豆の作付け面積は水稲の1/4程度となっており、水田輪作における大豆の作付比率が高まっている。従来、田畑輪換は雑草の耕種的防除法としての効果が強調されてきたが、近年は湛水条件でも畑条件でも生育・繁殖できる一年生雑草が増加する傾向にあり、一方での不十分な管理による残草が、次作での雑草害を招く可能性がある。そこで、暖地水田作地帯において水稲作と大豆作に共通して残存が認められる雑草を明らかにし、今後の水田輪作における雑草防除体系策定のための基礎資料とする。

成果の内容・特徴

  • 暖地水田作地帯において、2006年~2007年に水稲作圃場と大豆作圃場に共通して発生を確認し、かつ30%以上の水稲作圃場または大豆作圃場で発生していた草種は18種類ある(表1)。タカサブロウ類、アゼガヤ、チョウジタデ、クサネム、アゼナ類およびアメリカセンダングサは、水稲作と大豆作ともに30%以上の圃場で発生している。
  • タカサブロウ類は95%以上の水稲作圃場と大豆作圃場で発生し、水稲作圃場における多発生地点が多い(表1)。九州全域の水稲作圃場および北部九州の大豆作圃場に広く分布し、特に、福岡県、佐賀県、長崎県および大分県の北部4県と宮崎県の一部に多発生地域が存在する(図1、図2)。
  • アゼガヤは90%以上の大豆作圃場で発生し、多発生地点も40%近くにのぼる(表1)。福岡県、佐賀県、熊本県および大分県では水稲作圃場においても多発生地点が認められ、タカサブロウ類に次いで注意すべき雑草である(表2)。
  • 上記の草種の他、カヤツリグサ、イヌビエ、ツユクサおよびコヒメビエは50%以上の大豆作圃場で発生している。今後、大豆作付け頻度が増加して大豆作期にこれらの雑草密度が増加した場合、水稲作時にも問題化する可能性がある。

成果の活用面・留意点

  • 水田輪作地帯における注意すべき雑草の情報として防除体系策定の基礎資料とする。
  • タカサブロウ類はタカサブロウおよびアメリカタカサブロウ、アゼナ類はアゼナ、アメリカアゼナおよびタケトアゼナを指し、現地ではこれらの草種が混在している。
  • 多発生地点は、特定の雑草が圃場全体に発生、または部分的に高密度で発生していた調査地点を示す。

具体的データ

図1 水稲作圃場におけるタカサブロウ類の発生状況

図2 北部九州の大豆作圃場におけるタカサブロウ類の発生状況

表1 田畑共通雑草の発生割合(上位18種類)

表2 アゼガヤの発生割合と多発生地点の割合

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立
  • 課題ID:211-k.14
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:住吉正、保田謙太郎、小荒井晃、大段秀記
  • 発表論文等:住吉(2008)九州の雑草、38:8-11