成分調整成型堆肥を用いた諫早湾干拓地での春作バレイショの減化学肥料栽培

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要約

窒素付加堆肥と牛ふん堆肥を混合した成分調整成型堆肥を用いることにより長崎県の春作バレイショの慣行施肥量に対して57%の減肥(窒素施肥量6kg/10a)が可能で春作バレイショの目標収量の3200kg/10aを超える塊茎重を得ることができる。

  • キーワード:春作バレイショ、窒素付加堆肥、成分調整成型堆肥、減化学肥料栽培
  • 担当:九州沖縄農研・土壌環境指標研究チーム、長崎県総合農林試験場・環境部
  • 代表連絡先:電話096-242-1150
  • 区分:九州沖縄農業・生産環境、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

諫早湾干拓地の土壌は有機物に乏しく,堆肥施用による地力の維持・向上が必要であり、春作バレイショでは完熟牛ふん堆肥現物2トン/10aの施用が推奨されている。春作バレイショでは、県慣行施肥量よりやや少ない11kg/10aの窒素が施用されているが、環境保全型農業の着実な実施による「諫干ブランド」確立のために,特別栽培農産物の生産が求められている。そこで、成分調整成型堆肥を用いて現状の有機物の投入量を維持しつつ、化学肥料窒素施肥量の削減に取り組む。

成果の内容・特徴

  • 春作バレイショにおいて、窒素付加堆肥と牛ふん堆肥を混合して全窒素含量を3~3.5%に調整した成分調整成型堆肥(表1)を乾物1トン/10a、硫安を29kg/10a(窒素として6kg/10a)を施用することで、目標収量の3200 kg/10aを上回る収量が得られる(図1左の減肥区)。長崎県の春作バレイショにおける慣行の化学肥料窒素の施用量は14kg/10aであり、本成果により化学肥料窒素の57%の減肥が可能となる。
  • 成分調整成型堆肥から開花期(5月上旬)までに、全窒素の約4割の窒素が溶出する(表1)。硫安に含まれる窒素量と成分調整堆肥からの窒素溶出量の合計は18~21kg/10aであり、標準施肥と比べて高い。一方、バレイショの窒素吸収量は14~17kg/10aなので窒素供給はバレイショの養分要求量を十分満たしている(図1右)。
  • 土壌の全窒素含量は、成分調整成型堆肥を施用した場合も牛ふん堆肥を施用した場合と同様に高まる(図2)。また、可給態窒素についても、経年の減少が抑えられる(図3)ことから成分調整成型堆肥の施用は牛ふん堆肥ペレットと同等の土壌肥よく度の改善効果があると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 熊本県合志市にある堆肥センターで生産されている窒素付加堆肥ペレットと牛ふん堆肥ペレットのバルクブレンドでも同様の結果が期待できる。
  • 堆肥を全面全層施用、硫安を条施で行った時の結果である。生育途中の土壌pHが硫安を減肥していることにより慣行区に比べて0.2ポイント程度高くなるため、そうか病多発圃場での施用には罹病に注意を要する。

具体的データ

表1 供試した成分調整成型堆肥1の分析結果(乾物当たり)

図1 成分調整成型堆肥を用いた減肥栽培における塊茎収量(左)と収穫期における窒素収支(右)

図2 作土の全窒素含量の変化

図3 2008年春作跡地の作土の可給態窒素含量

その他

  • 研究課題名:有機質資材多投入地帯における合理的な資材施用のための土壌環境指標及び土壌管理技術の開発
  • 課題ID:214-q.2
  • 予算区分:実用技術開発(1930)
  • 研究期間:2007年~2009年
  • 研究担当者:荒川祐介、大津善雄(長崎県総農林試)、藤山正史(長崎県総農林試)