早生で幅広い作期に適する暖地向き稲発酵粗飼料用水稲新品種「まきみずほ」

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要約

水稲新品種「まきみずほ」は暖地で早生の晩に属する粳種である。稲発酵粗飼料用として全重が多く強稈であり、普通期栽培では暖地の主食用基幹品種「ヒノヒカリ」より早く収穫でき、晩植栽培でも地上部乾物収量が減収しにくい特徴を持つ。

  • キーワード:イネ、早生、稲発酵粗飼料、耐倒伏性
  • 担当:九州沖縄農研・特命チーム員(低コスト稲育種研究チーム、稲マーカー育種研究チーム)
  • 代表連絡先:電話0942-52-0647、電子メールtamtam@affrc.go.jp(稲育種ユニット)
  • 区分:九州沖縄農業・水田作、作物
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

現在、九州地域に普及している稲発酵粗飼料用品種の熟期は中生から晩生種が多く、麦跡普通期作では、主食用主力品種「ヒノヒカリ」との収穫時期が重なるため、黄熟期での適期収穫が困難となり、作付け拡大に支障を来している。そこで九州地域の二毛作地域で食用品種より前に収穫できる早生の多収飼料稲品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「まきみずほ(旧系統名西海飼261号)」は1999年に早生・強稈・極多収の「中国146号」(ホシアオバ)を母とし、極早生・多収の「北陸168号」(クサユタカ)を父として人工交配を行った組合せから育成された。
  • 出穂期は「日本晴」より早植栽培(5月下旬移植)で3日程度早く、「ホシアオバ」と同程度、黄熟期は「日本晴」「ホシアオバ」と同程度である。暖地では“早生の晩”に属する(表1、写真1)。黄熟期は暖地で普通期栽培(6月下旬移植)したヒノヒカリの収穫期(平年で10月上旬)より早い。
  • 稈長は“長”で、「日本晴」より約20cm長く、「ホシアオバ」より3~7cm長い。穂長は「日本晴」より約2.2cm長く、「ホシアオバ」と同程度の“やや長”で、穂数は「日本晴」の約6割、「ホシアオバ」の約8割程度の“少”である(表1)。
  • 稈は太く、稈質は剛で耐倒伏性は“やや強”であり、「日本晴」より強い。
  • 「まきみずほ」のいもち病真性抵抗性遺伝子型は“不明”であるが、Pita-2PibPizPiz-tを複数持つ可能性がある。葉いもち及び穂いもち圃場抵抗性は“不明”である(表1)。
  • 地上部乾物全重は早植栽培では「日本晴」より27%程度、「ホシアオバ」より2%程度重く、普通期栽培では「日本晴」より23%程度重く、「ホシアオバ」とほぼ同程度である(表1、図1)。作期が遅くなっても全重の低下が少なく、晩植栽培(7月下旬移植)でも収量確保が容易である(図1)。
  • 推定可消化養分総量(TDN)含量は56%程度と通常の品種と差はなく、面積当たりの推定TDN収量は早植栽培では「日本晴」より27%多く、「ホシアオバ」と同程度である(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 強稈で地上部乾物全重が多収の早生種として暖地の平坦部での栽培に適する。
  • 普及見込み地帯は福岡県筑後地域(大川市周辺)で普及見込み面積は約20haである。
  • いもち病真性抵抗性を有し、通常の菌系では発病は見られないが、発病を認めたら適切に防除する。
  • 大粒のため、主食用品種との識別が容易である。育苗に際しては播種量を多くする。

具体的データ

表1 「まきみずほ」の特性概要(2004~2008年)

写真1.「まきみずほ」の早植栽培における立毛。左:日本晴、中央:ホシアオバ、右:まきみずほ

図1 各作型における地上部乾物収量の比較。(2007、08年の結果、日本晴は2008年の結果。)

その他

  • 研究課題名:暖地向き多作期対応超多収発酵粗飼料用稲品種の育成
  • 課題ID:212-a-01-016-00-N
  • 予算区分:えさプロ1系
  • 研究期間:1999~2008年度
  • 研究担当者:田村泰章、坂井真、田村克徳、片岡知守、岡本正弘、平林秀介、溝淵律子、梶 亮太、深浦壮一
  • 発表論文等: