極低ポリフェノールで加熱後褐変せず多収で高品質の二条大麦新品種「白妙二条」
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要約
二条大麦新品種「白妙二条」は、褐変を引き起こすポリフェノール含量が極低く、炊飯後に褐変をほとんど起こさない。精麦白度と歩留りが高く精麦品質が優れる。ニシノホシと同等の早生、短稈、多収である。穂発芽性が易でオオムギ縞萎縮病ウイルスIII型系統に罹病する。
- キーワード:二条オオムギ、新品種、ポリフェノール、加熱後褐変、精麦品質
- 担当:九州沖縄農研・特命チーム員(大麦・はだか麦研究チーム)
- 代表連絡先:電話 0942-52-3101
- 区分:九州沖縄農業・水田作、作物
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
大麦は食物繊維β-グルカン等の機能性成分を豊富に含んだ穀物であり、生活習慣病予防に効果があるとされている。しかし、既存品種は加熱後褐変の原因であるポリフェノール類を多量に含み、需要拡大の妨げとなっている。そこで、精麦用主力品種「ニシノホシ」並の栽培・品質特性を持ち、極低ポリフェノールで加熱後褐変を起こさない二条大麦品種を育成する。
成果の内容・特徴
二条大麦新品種「白妙二条」は、プロアントシアニジンフリー遺伝子の導入による極低ポリフェノール化を育種目標として、2000年度からプロアントシアニジンフリー遺伝子ant28を持つ「泉系A133-3(西海皮54号(後のニシノホシ) /ant28-494)」に、「ニシノホシ」を戻し交雑して育成した主食用の品種である。「ニシノホシ」と比較して、次のような特徴がある(表1)。
- 播性はI、茎立性はやや早の春播性で、出穂期と成熟期が1日程度遅い早生種である。
- 稈長、穂長、穂数は同程度で、耐倒伏性も同程度のやや強で,生育特性は「ニシノホシ」に類似する。
- 千粒重、容積重、整粒歩合、外観品質はほぼ同じで、子実収量も同程度であるが多肥栽培ではやや少ない。
- 病害抵抗性は「ニシノホシ」と同等で、うどんこ病には極強、オオムギ縞萎縮病ウイルスのI型系統に抵抗性であるがIII型系統に罹病し、赤かび病にはやや強である。
- 穂発芽性は易でやや劣る。
- 精麦白度は同程度に高く、搗精時間はやや長くやや硬質で、砕粒率は同程度である。
- 加熱後褐変に影響する精麦のカテキン+プロアントシアニジン含量は「ニシノホシ」の約1割で炊飯後に褐変をほとんど起こさず、麦飯等の色相評価が極めて高く優れる。
成果の活用面・留意点
- 暖地・温暖地の平坦地に適し、麦飯のみならず、レトルト食品、大麦粉等の新しい付加価値を持つ食材原料として生産が期待される。
- 穂発芽し易いので適期収穫を徹底する。
- 「ニシノホシ」と同様に千粒重が低下することがあるので、適正な施肥量による栽培と排水対策を十分に行い粒の充実をはかる。
- オオムギ縞萎縮病ウイルスIII型系統には罹病するので、III型系統の汚染地帯では栽培しない。
具体的データ


その他
- 研究課題名:極低ポリフェノール大麦を利用した機能性食材の新規用途開発
- 課題ID:311-d
- 予算区分:高度化事業(1656)、交付金
- 研究期間:2000~2008年度
- 研究担当者:河田尚之、小田俊介、八田浩一、藤田雅也、久保堅司、波多野哲也、塔野岡卓司、吉田めぐみ、吉岡藤治
- 発表論文等:品種登録出願23483号(平成21年2月)