早生で食味のよいイチゴ新品種「こいのか」

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要約

「こいのか」は、早生で連続出蕾性に優れ、年内収量の多い促成栽培用イチゴ品種である。果実の硬度は高く日持ち性に優れ、糖度が高く、食味は極めて良い。

  • キーワード:イチゴ、早生、日持ち性、良食味、連続出蕾性、促成栽培
  • 担当:九州沖縄農研・イチゴ周年生産研究チーム
  • 代表連絡先:電話0942-43-8362
  • 区分:九州沖縄農業・野菜花き、野菜茶業・野菜育種
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

全国屈指のイチゴ促成栽培産地である九州地域では、新品種の育成や生産技術の開発等によりイチゴ産地の活性化が図られている。しかし、「とよのか」の良品生産が困難な九州北部山間地域等の低温・寡日照の気候条件下で安定して栽培できる優良品種は育成されていない。そこで、九州北部山間地域等の気象条件にも適した早生で良食味の促成栽培用品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「こいのか」は、日持ち性と食味に優れる「さちのか」を母親に、早生性と収量性に優れる「とちおとめ」を父親として交雑して2000年に得られた実生から選抜された。
  • 草姿は立性で、分枝型の果房形態を有し、果房当たり花数は「とよのか」より多く、「さちのか」よりやや少ない(図1、表1)。
  • 花芽分化期は、暖地でのポット育苗では「とよのか」より早い9月上旬である。普通促成栽培での開花始期は「とよのか」より10日程度早く、連続出蕾性が優れる(表1)。
  • 花芽分化処理をしない普通促成栽培での収穫開始期は「とよのか」より20日程度早い。年内収量は「とよのか」より多く、2月末までの早期収量および4月末までの収量は「とよのか」や「さちのか」と同程度以上であり、商品果率も同程度である(表1、表2)。
  • 果実は円錐~長円錐形で、大きさは「とよのか」よりやや小さいが、「さちのか」と同程度以上である。果皮色は赤色で光沢があり、果肉色は淡燈色~淡赤色である。果実は「とよのか」より硬く、「さちのか」よりやや軟らかく、日持ち性に優れる。糖度が高く、食味は極めて良好である(図1、表2)。
  • 九州北部山間地域等の低温・寡日照の気象条件下でも安定した栽培が可能である(表3)。
  • うどんこ病に対しては中程度の抵抗性、疫病に対して強度の抵抗性、炭疽病に対しては罹病性を示す(データ略)。

成果の活用面・留意点

  • 長崎県および大分県の促成栽培産地で約50ha普及見込みである。
  • 高設での多肥栽培では着色不良果が発生することがあるので、施肥は基肥量を減らし、追肥主体で行う。あるいは、基肥は施用せずかん水同時施肥を行う。

具体的データ

図1 「こいのか」の果実(左)と着果状況(右)

表1 促成栽培における形態特性と早晩性

表2 促成栽培における収量および果実品質

表3 大分県竹田市の現地試験における収量および果実品質

その他

  • 研究課題名:西南暖地におけるイチゴの周年高品質生産技術の開発
  • 課題ID:213-b.2
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2000~2008年度
  • 研究担当者:沖村誠、曽根一純、北谷恵美、木村貴志、梁瀬十三夫(長崎総農試)、野口浩隆(長崎総農試)、
                       藤田晃久(長崎総農試)、丸山竹男(大分農研セ)、宇留嶋美奈(大分農研セ)、
                       豊福博記(大分農研セ)、山田芳文(大分農研セ)、畑山とも子(大分農研セ)
  • 発表論文等:2008年8月27日品種登録出願(出願番号:22852号)