飼料イネ品種「モーれつ」は生育初期の耐塩性が高い

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要約

飼料イネ品種「モーれつ」は塩濃度の高い土壌(EC値983μS/cm)で栽培しても、他の九州での主要な飼料イネ品種と比較して初期生育が抑制される程度が少ない。

  • キーワード:飼料イネ、耐塩性、塩害
  • 担当:九州沖縄農研・周年放牧研究チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-1150、電子メールkaro@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・畜産・草地(草地飼料作)、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

干陸初期の干拓地や、高潮等で海水の浸入した圃場、渇水時に塩濃度の高い灌漑水を利用した圃場では、塩類が残留し、作物に塩害が発生しやすい。稲発酵粗飼料用イネ(飼料イネ)は湛水条件下で栽培できるため、耐塩性の高い品種を利用することで、湛水による除塩を行いながら作物生産が可能と考えられる。しかし、飼料イネでは耐塩性の高い品種が見いだされていない。そこで、諫早湾自然干陸地(河川敷)の作物未栽培地より採取した塩分を含む土壌(EC値983μS/cm)および水田土壌(EC値205μS/cm)を用いて、九州での主要な飼料イネ品種をポット栽培し、最も塩感受性の高い時期の一つである初期生育(移植後35日間)を比較し、耐塩性の高い飼料イネ品種を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 「モーれつ」は塩濃度の高い土壌条件下でも顕著な生育阻害は見られない(図1)。一方、同じ条件で栽培した「ホシアオバ」、「ニシアオバ」、「タチアオバ」は、葉の黄白化、新葉が展開しないなどの生育異常が認められ、生育が阻害される。
  • 「モーれつ」は塩濃度の高い土壌で栽培しても生育異常率は施肥区で0%、無施肥区で25%と供試した4品種の中では最も低い(表1)。一方、「ホシアオバ」、「ニシアオバ」は塩濃度の高い土壌で栽培した全ての個体で生育異常が認められる。
  • 「モーれつ」の地上部乾物重は、水田土壌施肥区と比較し、塩濃度の高い土壌の無施肥区で約4割、施肥区で約5割程度と生育が阻害される程度は少ない(表2)。一方、「ホシアオバ」、「ニシアオバ」、「タチアオバ」を塩濃度の高い土壌で栽培した場合、施肥区、無施肥区とも地上部乾物重が水田土壌施肥区と比較して1割から2割程度と小さく、著しい生育阻害を示す。
  • 以上から飼料イネ「モーれつ」は生育初期の耐塩性が高いと判断される。

成果の活用面・留意点

  • 塩害が予想される地域での飼料イネ生産の基礎資料として活用できる。
  • 本試験では土壌中に残留した塩類に対しての耐塩性を評価しており、潮風害時の耐塩性については別途調査が必要である。

具体的データ

図1.刈取時のイネ

表1.生育異常率*(移植後35 日目)

表2.地上部乾物重(移植後35 日目、mg/pot)

その他

  • 研究課題名:周年放牧による放牧(肥育)期間の延長と自給飼料資源を活用した肉用牛の育成・肥育システムの開発
  • 課題ID:212-d.4
  • 予算区分:受託
  • 研究期間:2005年度
  • 研究担当者:加藤直樹、佐藤健次、服部育男、山本克巳、久保田哲史、原口暢朗