牛ふん剪定残さ混合堆肥は夏作前施用で秋冬期レタスに肥料効果が得られる

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要約

牛ふん剪定残さ混合堆肥を夏作前に施用することにより、堆肥による土壌窒素の取り込み時期を避けてレタスの栽培できるため秋冬期レタスの生育が良好になる。ジャーガルにおける施用量は3.5t/10aとするが、未熟畑ではカリの固定があるため多量に施用する必要がある。

  • キーワード:レタス、窒素無機化、牛ふん剪定残さ混合堆肥、カリ固定、ジャーガル
  • 担当:九州沖縄農研・南西諸島農業研究チーム(土壌環境指標研究チーム)
  • 代表連絡先:電話096-242-1150
  • 区分:九州沖縄農業・生産環境
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

ジャーガルの土壌理化学性の改善を図るため、また、沖縄本島南部の未利用資源である剪定残さを有効活用する観点から、牛ふん剪定残さ混合堆肥を開発し、レタス三作連続栽培で、3.5t/10aの施用でカリの無施肥栽培が可能であることが示されている。しかしながら1この堆肥は窒素の肥効が極めて緩慢でレタス作前に投入した場合には栽培期間中に窒素は有効化しないこと。2園芸作が盛んな当該地域の堆肥の需要は秋口に集中し、堆肥出荷と散布作業の繁忙を生じていることから、新規造成畑やサトウキビ栽培後のレタス3作体系(秋~春作)を対象に、当該堆肥を夏作前に投入することで、労力分散、レタスへの肥効期待、重粘なジャーガルの理化学性改善効果の促進を検討する。

成果の内容・特徴

  • 牛ふん剪定残さ混合堆肥は、はじめ窒素の無機化が認められるが、その後、窒素の有機化が進行する。その後、炭素の分解率が3割を超えると、窒素の無機化が再開する。再開時期はレタス秋作~春作栽培時期にあたる(図1)。牛ふん剪定残さ混合堆肥を夏作前に施用することにより、堆肥による土壌窒素の取り込み時期を避けてレタスの栽培でき、かつ窒素の肥効も期待できる。
  • ジャーガルの新規造成畑やサトウキビ生産圃場のカリウム固定容量が大きく、堆肥を多量投入しても交換性カリウム含量は大きく上昇しない(図2)。
  • 堆肥夏作前10 t/10a施用のレタスの調整重は第1、第2作は秋作前施用と同等であるが、第3作は秋作前施用を上回る(表1 初年目)。体内中の窒素濃度、カリウム濃度は夏作前10 t/10a施用で高く、レタスへの肥効が認められる。一方、堆肥夏作前3.5 t/10a施用のレタスの調整重は第1作では秋作前施用を上回るが、2作目以降は同等となる(表1 二年目)。体内中のカリウム濃度は秋作前施用に比べて明らかに低い。カリウムの肥効確保と理化学性改善効果を速やかに得るため、夏作前施用では多量に施用する。
  • 牛ふん剪定残さ混合堆肥の施用で土壌の有機態炭素含量、可給態リン酸含量、交換性カリウム含量が高まる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 牛ふん剪定残さ混合堆肥は沖縄県八重瀬町のG堆肥舎から購入した。乳牛ふんの混合割合は約70%で堆積期間はおよそ3ヶ月である。
  • レタス三作連続栽培-夏作緑肥栽培体系に活用する。牛ふん剪定残さ混合堆肥の夏作前施用では窒素の有機化が進むため、夏作緑肥の生育は若干劣る。
  • 「広葉樹剪定残渣、バガス等を副資材とする乳牛ふん堆肥化の適正混合重量比(平成17年度生産環境成果情報)」と「家畜ふん剪定残さ堆肥の肥効を勘案したレタス三作連続栽培における施肥法(平成17年度生産環境成果情報)」をあわせて参照する。

具体的データ

図1 夏作前施用した時の供試堆肥の土壌中での炭素と窒素の無機化

図2 本栽培試験圃場(新規造成畑)、レタス生産圃場並びにサトウキビ生産圃場で採取した土壌に牛ふん剪定残さ混合堆肥を入れて培養した後の交換性K 含量の変化

表1 秋冬レタスの調整重、外葉部の窒素含量およびカリウム含量

表2 土壌の理化学性

その他

  • 研究課題名:南西諸島における島しょ土壌耕地の適正管理、高度利用を基盤とした園芸・畑作物の安定生産システムの開発
  • 課題ID:214-v
  • 予算区分:交付金プロ(沖縄広域連携)、基盤
  • 研究期間:平成17~20年
  • 研究担当者:荒川祐介