負圧浸入計による二毛作水田と水稲単作田の耕盤透水特性の評価

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要約

二毛作水田では耕盤に粗大間隙が多く存在するため、飽和状態での耕盤透水係数は、水稲単作田より著しく高い。しかし、粗大間隙は不飽和状態では働かないため、砂含量が多い河川中流域灰色低地土や黄色土の不飽和状態での耕盤透水係数は水稲単作田と同程度に小さい。

  • キーワード:負圧浸入計、透水特性、耕盤、二毛作、粗大間隙、水田
  • 担当:九州沖縄農研・九州水田輪作研究チーム、土壌環境指標研究チーム
  • 代表連絡先:電話0942-52-3101
  • 区分:九州沖縄農業・生産環境、水田作、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

二毛作水田では、冬作期間の蒸発散に伴う乾燥亀裂や作物根跡によって水稲単作田より耕盤の粗大間隙量が増大し、水田(飽和)状態での排水性が高まるとされる。しかし、畑(不飽和)状態での土壌水分移動では、粗大間隙は働かないため、粗大間隙を除いた部分の透水性が重要となる。減水深は、水田の透水性の目安とされ湛水状態で測定されるが、非湛水期間も含めた評価はできない。そこで、粗大間隙を除いた透水性を測定できる負圧浸入計を用いて二毛作水田と水稲単作田の耕盤透水特性を評価する。

成果の内容・特徴

  • 調査対象の福岡県・佐賀県南部の平野は二毛作が多く、その土壌は大部分が灰色低地土に分類される。河川下流域は粘土含量が多く粗砂含量が少ない。一方、河川中流域は砂含量が多い。安武、甘木はそれぞれ黄色土、黒ボク土にあたり、どちらも粗砂が多い。(図1)
  • 負圧浸入計(図2)で測定した二毛作水田の耕盤透水係数は、飽和状態のh=0 cmでは10-3 cm s-1オーダーであり、一般に水稲作で適正とされる降下浸透量15~25 mm d-1相当より著しく大きい。しかし、不飽和状態のh=-12 cmでは10-5 cm s-1オーダーであり、わずかな負圧で著しく低下する(図3a)。このことは水田状態では水の通り道となる耕盤の粗大間隙が、畑状態の透水性には関与しないことを示している。砂含量が多い河川中流域灰色低地土や黄色土壌においては、畑状態の耕盤透水係数は、粗大間隙の少ない水稲単作田と同程度に小さい(図3a、b)。
  • 水稲単作田の耕盤透水係数は、飽和状態のh =0 cmでは河川下流灰色低地土は適正浸透量に近く、河川中流灰色低地土および黄色土では適正浸透量より大きい。不飽和状態では負圧が大きくなるほど透水性が低下し、河川下流域灰色低地土では、h=-12 cmのとき水の浸入が読みとれないほど小さい(図3b)。このことは水稲単作田にも粗大間隙は存在することを示しているが、その程度は二毛作水田に比べて小さい。

成果の活用面・留意点

  • 負圧浸入計による測定範囲h=-12~0cmは、圃場容水量より湿潤な状態である。夏作直前に測定した結果である。
  • 透水性の高まった二毛作水田において湛水を維持するためには、代かきを行う、地下水位を上げるなど耕盤の透水性によらない降下浸透管理が必要である。
  • 二毛作水田耕盤では、水分状態に応じた水移動経路の変化が大きく、畑利用時に一定量以上の降雨があると、排水初期に施肥成分が速やかに根圏外に流出する可能性が高い。

具体的データ

図1 調査対象地の土性(粘土:シルト:砂粗砂%)

図2 負圧浸入計概観

図3 圃場耕盤の透水係数a) 二毛作, b)水稲単作

その他

  • 研究課題名:九州地域における水田輪作システムの開発
  • 課題ID:211-k
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2007~2008年度
  • 研究担当者:中野恵子、久保寺秀夫、原嘉隆