暑熱環境下の肥育後期豚では飼料中アミノ酸の消化吸収能力が低下する

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要約

適温と比較して暑熱環境下の肥育後期豚では、膵臓と空回腸が小さくなり、粗蛋白質およびリジンをはじめとした各種アミノ酸の回腸末端部での見かけの消化率は3~7%低下する。

  • キーワード:暑熱ストレス、肥育後期豚、回腸末端部、アミノ酸、見かけの消化率
  • 担当:九州沖縄農研・暖地温暖化研究チーム、九州バイオマス利用研究チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-7749
  • 区分:九州沖縄農業・畜産草地(家畜)、畜産草地
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

暑熱環境下の肥育後期豚では飼料摂取量が減少して、増体成績や飼料効率が低下する。その一因として消化吸収能力の低下が指摘されているが、詳細については明らかにされていない。 そこで、暑熱ストレスが肥育後期豚の消化吸収能力に及ぼす影響を明らかにするために、消化吸収に関係する臓器重量を評価するとともに、豚の成長に大きく関わるアミノ酸の消化吸収を評価することをねらいとする。

成果の内容・特徴

  • 適温に比較して暑熱環境下で飼育した肥育後期豚では、膵臓が16%、空回腸が19%小さくなり(図1) 、小腸での消化吸収能力が低下していることが示唆される。
  • 暑熱環境下で飼育した肥育後期豚では、回腸末端部での粗蛋白質およびアミノ酸の見かけの消化率が、適温に比較して3~7%低下する(表1)。
  • 豚で第1制限アミノ酸となりやすいリジンについて、回腸末端部での見かけの消化率は、適温環境下では78.0%、暑熱環境下では72.2%であり、暑熱の影響を大きく受ける(表1) 。

成果の活用面・留意点

  • 肥育後期豚における暑熱対策技術を検討するための基礎データとなる。
  • 粗蛋白質およびアミノ酸消化率のデータは「見かけの消化率」であるため、暑熱環境に適応した精密飼料設計を行うためには、「真の消化率」を測定する必要がある。
  • 暑熱と適温で飼料摂取を同量にして比較した結果であり、さらに強い暑熱条件下では、飼料摂取量が大幅に減少して、消化率は上昇するものと考えられる。

具体的データ

図1.環境温度が豚の消化吸収関係臓器の大きさに及ぼす影響

表1.粗蛋白質および各種アミノ酸の回腸末端部での見かけの消化率に暑熱環境が及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:暖地・温暖地における気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
  • 課題ID:215-a.3
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:松本光史、村上 斉、井上寛暁、梶 雄次
  • 発表論文等:松本ら(2008)栄養生理研究会報、52(2):43-48