スクミリンゴガイ越冬貝の耐寒性消失条件

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要約

スクミリンゴガイ越冬貝の耐寒性は、湛水条件で25°Cで4日間、20°Cでは8日間で消失する。湿潤条件では25°Cでも耐寒性は完全には消失しない。

  • キーワード:スクミリンゴガイ、耐寒性、グリセロール
  • 担当:九州沖縄農研・九州水田輪作研究チーム、難防除害虫研究チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-7732
  • 区分:九州沖縄農業・病害虫、九州沖縄農業・水田作
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

スクミリンゴガイは西日本を中心にイネの重要害貝となっている。これまでの研究により、本種が越冬前に耐寒性を上昇させて越冬していることが明らかとなっている。そこで、冬期の防除技術開発のため、本種の耐寒性が消失する条件を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 12月に熊本県内のレンコン圃場周辺の水路から採集したスクミリンゴガイ(殻高7.5~17.5mm)は夏期の貝に比べて耐寒性が高く、0°Cに5日間保管しても、80%以上の個体が生存する(既知情報)。
  • 越冬個体の耐寒性は湛水(水中)条件で飼育すると、25°Cで4日間、あるいは20°Cで8日間で消失する(図1 A)。15°Cで飼育した場合、64日経過しても耐寒性は維持される(図1A)。
  • 越冬個体を水中から取り出し、相対湿度100%の湿潤条件で保管すると、25°Cで64日間経過しても耐寒性はほとんど消失しない(図1 B)。
  • 耐寒性消失に対する、エサの有無の影響は小さい(図1 B)。
  • 本種の耐寒性上昇に関与すると考えられている体内のグルコース、グリセロール濃度は、飼育期間に伴って変化し(図2)、グリセロール濃度は0°C5日間処理での生存率と正の有意な相関があったことから(Pearson’s regression analysis, r =0.879, d.f. = 4, P = 0.021)、グリセロール濃度の減少が耐寒性消失に関与していると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • スクミリンゴガイ防除技術開発のための基礎的知見となる。
  • 成果の内容・特徴の1については、Wada T. and K. Matsukura (2007) Malacologia 49: 383-392を参照。

具体的データ

図1.異なる条件下でスクミリンゴガイ越冬幼貝を飼育した場合の飼育期間と0°C5日間処理による生存率の関係

図2.25°C湛水条件下での飼育期間と体内のグルコース・グリセロール濃度の関係

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立
  • 課題ID:211-k.8
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2007~2008年度
  • 研究担当者:松倉啓一郎、和田 節
  • 発表論文等:Matsukura K. et al. (2009) Malacologia 51 (印刷中)